2004 Fiscal Year Annual Research Report
重層社会を作るヒヒ類の社会生態学的、集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
14405005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 明雄 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (50027504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庄武 孝義 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (00003103)
杉浦 秀樹 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (80314243)
岩本 俊孝 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (40094073)
山根 明弘 北九州市立自然史歴史博物館, 学芸員 (10359474)
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Keywords | マントヒヒ / 遺伝的変異性 / ミトコンドリアDNA / ヒヒ類の種分化 / 重層社会 / ワン・メイル・ユニット / 父系 |
Research Abstract |
森は、サウジアラビア、タイーフ市のダムの水飲み場にやってくるマントヒヒの観察を行った。この群れでは、1998年以来毎年マントヒヒを捕獲し、耳タッグで標識し、放している。標識個体を確認すると同時に、標識個体の加わっているユニットの構成確認をした。ユニット間の共存率から、ユニット間の近縁関係を解析した。これらの結果を、過去4年間のデータと比較し、ユニットの動態を明らかにした。結果はサウジアラビアのユニットはエチオピアのものと比べて安定性が低い。クラン構造やバンド構造は不明確である。ダム地域群は閉鎖系ではなく、近隣の群れに集団で移住したり、また、帰ってきたりすることを見いだした。庄武・山根は、タイーフ市から南東に約200キロ離れたBishaのセメント工場敷地内ゴミ捨て場(GPS data : N19゜30'34.8″,E42゜32'31.4″,1476.2m)においてマントヒヒのワン・メイル・ユニットの捕獲を行った。アダルトオスを含む14頭のマントヒヒの捕獲に成功した。捕獲したマントヒヒは麻酔処理の後、採決および、耳タッグによる標識を行い、麻酔から完全に覚醒した後、放逐した。採集した血液は、国立野生生物研究センター(NWRC)の実験室にて、遠心分離器による各血液分画の分離を行い、そのうちのバフィーコート分画のみを京都大学霊長類研究所に持ち帰った。なお、これらのサンプルを日本に持ち帰るにあたり、ワシントン条約に従い、NCWCDよりCITESのための証明を取得した。これらのサンプルからDNAを抽出し、ミトコンドリア遺伝子D-loop領域の塩基配列解読を行った。岩本は海外共同研究者のアハメッド・ブークと現地調査し、アルハダ群およびダム地域群の行動域内で植生調査を行い、両調査地の自然植生の比較を行った。また、ブークは12月に来日し、両群で収集した行動追跡データを分析して、サウジアラビアに棲息するマントヒヒの採食戦略に関する論文草稿を作成した。
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