2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14405006
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井鷺 裕司 広島大学, 総合科学部, 助教授 (50325130)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出口 博則 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60117017)
|
Keywords | 系統地理 / 種分化 / 隔離分布 / ヤシ科 / ビロウ属 / 国際研究者交流 / オーストラリア |
Research Abstract |
本年度はオーストラリァの西部に分布するLivistonaを対象に、以下の採集を試み、予定通りの採集を順調に行うことができた。 (1)Livistona lorophylla : Western Australiaの乾燥した岩山や渓谷の崖に生育する。2ヶ所で採集を行った。(2)Livistona victoriae : Northern TerritoryからWestern Australiaに分布する。絶滅危惧種として扱われている。本研究の開始前にNorthern Territoryのビクトリア川で2001年に採集を行っているが、本年度はWestern Australiaにおける本種の分布の西端に位置する2ヶ所の個体群を対象に採集を行った。(3)Livistona eastonii : Western Australiaの乾燥した台地上に限定的に分布する。本年度の調査では1ヶ所で採集を行った。(4)Livistona alfredii : Western Australiaに分布する絶滅危惧種。河川沿いの水分条件の良好な場所に生育する。オーストラリアに分布するLivistonaの内で最も孤立し、分布が限定されている分類群であるが、本年度の調査では分布域内において3日間滞在し、6個体群を対象に採集ができた。これらのサンプルから、本種の持つ遺伝的多様性を評価できるものと期待される。(5)Livistona nasmophila : 1998年に記載された新しい分類群であり、Western Australiaに分布する。本種はNorthern Territoryにおいて、限定された場所に隔離分布する絶滅危惧種、Livistona rigidaおよびLivistona mariaeと比較的近縁であるとされており、隔離分布するLivistonaの起源と進化を探る本研究において重要な分類群である。4個体群で採集ができた。 これらの分類群の系統関係を明らかにするために、昨年度のサンプルも加えて、葉緑体DNA及び核DNAの遺伝子座を対象に系統解析を行った。オーストラリアのヤシLivistonaの種分化に関しては、耐乾燥性や耐火性の獲得が重要であり、そのような性質を獲得した分類群は、広範囲に分布し、個体数も多い傾向があるが、系統解析に基づく系統地理学的な分析から、耐乾燥性や耐火性が、オーストラリアの各地において複数回進化したということが推測された。
|