2003 Fiscal Year Annual Research Report
グリーンランドのホッキョクグマにおけるビタミンAの蓄積の研究
Project/Area Number |
14406001
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
妹尾 春樹 秋田大学, 医学部, 教授 (90171355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 伸好 秋田大学, 医学部, 助手 (60361218)
佐藤 岳哉 秋田大学, 医学部, 助手 (10312696)
佐藤 充 秋田大学, 医学部, 助教授 (60226008)
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Keywords | ホッキョクグマ / グリーンランド / ビタミンA / ダイオキシン / PCB / 環境汚染物質 / 臓器障害 / 肝臓星細胞 |
Research Abstract |
平成16年7月から8月にかけてグリーンランド東岸のIttoqqortoormiitにおけるホッキョクグマの捕獲のためノルウエーオスロ大学のR.Blomhoff博士と詳細な打ち合わせをおこなった。すでに宿舎、研究室の準備、およびヘリコプターを含む交通手段、食料の確保など、ロジスティックの手配は完了した。比較対象研究として今までにノルウエー領スバールバル群島(北緯80°)においての国際共同研究で得られた、ホッキョクグマの全身の器官のビタミンAを解析した。その結果、ホッキョクグマではヒトやラットに比較して100倍もの高濃度のビタミンAを肝臓星細胞に貯蔵していることが明らかになった。星細胞の数はヒトやラットと同じであり、個々の星細胞のビタミンA貯蔵能力が大きいことが判明した。ヒトやラットをはじめ多くの動物では肝臓実質細胞の核は細胞の中心に位置している。ところがこれらの食物網の上位に位置し、大量のビタミンAを星細胞に貯蔵している動物では核は類洞側にずれていた。一方でホッキョクグマと同じく食物網の上位に位置するホッキョクギツネではビタミンAは肝臓で星細胞のみでなくグリソン鞘とよばれる結合組織に存在する間葉系細胞にも貯蔵されている。それらのグリソン鞘には構造が破壊されているものも見られた。ビタミンAを実験動物に大量に投与するとグリソン鞘に存在する間葉系細胞にも取り込まれ貯蔵されることはしばしば観察されるが、グリソン鞘の構造そのものが破壊されることはない。近年、北半球の工業国から排出される環境汚染物質は北極圏に「台所の流し」のように流入し、そこに棲む動物には高濃度のダイオキシンやPCBが蓄積している。もちろん動物だけでなく、ヒト例えばイヌイット婦人の母乳にも高濃度の内分泌かく乱物質が検出されている。上述のホッキョクギツネの肝臓で観察された障害はビタミンAと内分泌かく乱物質との相互作用による可能性があり、ヒトにも警告を与える所見といえる。平成16年7月から8月にかけて現地での動物の捕獲の際にはこれらの臓器障害に特に配慮して試料を収集する予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Higashi, N.: "Distribution of vitamin A-storing lipid droplets in hepatic stellate cells in liver lobules-A comparative study-"Anat Rec. 271A. 240-248 (2003)
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[Publications] Sato, M.: "Hepatic stellate cells : Unique characteristics in cell biology phenotype"Cell Struct Func. 28. 105-112 (2003)
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[Publications] Suzuki, S.: "Involvement of EMMPRIN in pro-MMP-2 production and activation in coculture of laryngeal cancer cells and fibroblasts through MT1-MMP"Exp Cell Res. 293. 259-266 (2004)
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[Publications] Senoo, H.: "Structure and function of hepatic stellate cells"Med Electron Miocrosc. 37. 3-15 (2004)
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[Publications] Wold, H.L.: "Vitamin A distribution and content in tissues of the lamprey(Lampetra japonica)"Anat Rec. 276A. 134-142 (2004)
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[Publications] Dragland, S.: "Several culinary and medicinal herbs are significant sources of dietary antioxidants"J Nutr. 133. 1286-1290 (2003)
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[Publications] 妹尾春樹: "医学大辞典"医学書院. 35 (2003)