2002 Fiscal Year Annual Research Report
グアテマラ内戦における女性被害者のPTSDに関する臨床、および生理学的研究
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14406025
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
宮西 照夫 和歌山大学, 保健管理センター, 教授 (60094679)
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Keywords | 国際研究者協力 / グアテマラ共和国 / サンチアゴ・アティトラン / 精神医学 / PTSD / ススト / 文化依存性 / 精神生理学的反応 |
Research Abstract |
1.目的:グアテマラにおけるPTSDの研究は皆無に等しく、また、戦争被害に関係したPTSDの研究で女性を対象としたものは極少数である。本調査は、グアテマラ共和国ソロラ州サンテチアゴ市郊外の集落において、内戦で夫や子どもを殺害されたマヤ先住民女性の自助グループIXMUCANE(構成員290名)を対象に、(1)PTSDの文化依存的側面を明らかにすること、さらには、(2)外傷的出来事を想起時等の生理学的変化を検査し、PTSDの基本障害に対応する生理学的反応を解明することを目的とした調査を実施した。 2.調査期間:2002年8月26日〜9月16日の22日間。 3.調査方法、及び結果。 (1)DSM-IVの診断基準を用い、27名を面接し精神医学的診断を実施した。PTSDの症状がみられたのは11名(2名が完全型、9名が不完全型)であり、4名が身体表現性、2名が気分障害(うつ病性)と診断された。また、全員が外傷体験時の驚愕体験をスストと,そして現在の状態を9名がネルビオスと表現し、7名に特有の泣き発作を認めた。これらの多彩な症状は、内戦による伝統的医療文化の破壊によりスストとしての初期治療に失敗し、そして、いまだに亡骸が発見されておらず喪失体験を処理できず、さらにはその後の貧困から派生したストレスが加わり形成されたと考えられた。(2)内20名に多機能生態記録装置(ポリメイト・TEAC電子計測)を用い、外傷的出来事を想起時の精神生理学的反応をEEG、ECG、そして眼球運動などを指標とし記録した。脳波上、PTSD群と他の群では刺激前後のアルファ波ピークのずれにおいて差異が認められたが、今後さらに事例を増やし詳細な分析を行いたい。(3)15、16年度の調査のため、スクリーニング調査用紙の作成と調査員の訓練を実施した。4)グアテマラ保健省で先住民女性の精神保健改善対策を協議した。
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