2003 Fiscal Year Annual Research Report
ソクラテス以前の哲学の展開における神話の意義に関する研究
Project/Area Number |
14510008
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Research Institution | KANAZAWA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
三浦 要 金沢大学, 文学部, 助教授 (20222317)
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Keywords | パルメニデス / デモクリトス / 神話 / ロゴス |
Research Abstract |
本年度は特にパルメニデスの哲学詩の序歌における無名の「女神」を中心とした神話的表象の意味と、原子論者デモクリトスにおける原子論の枠内での神々についての見解を考察した。 まず、パルメニデスはその著作断片において、「アナンケー」「モイラ」「ディケー」「ペイトー」という四つの異なる伝統的な女神を導入しているが、これは探究の真の対象である「あるもの」「あるということ」の内的必然性そのものの神格化である。また、序歌において真理の開示を約束する女神も、「ある」の道のみが探究の道であるということのア・プリオリ性を保証するものとして登場している。哲学的・自然学的思考に厳密なロゴスを要求しているパルメニデスが、まさにその要求のただ中でミュトス(神話)を用いている。しかしこれは、神話的表象が彼の詩の虚構性を示唆し、彼の詩の全体が結局はひとつの神話であり、彼が神話的思考へと後退しているということではなく、むしろ、神話的表象は、神話の持つ範型性・規範性に基づいて、彼の詩の論理性と真理性を保証しているのである。 また、デモクリトスにおいては、神々はもはや世界を創造し統御するものではないが、人間の想像力の産物以上の何ものでもないという無神論的立場をとるものでもない。原子論においても依然として神々は心理的なものではなく、客観的に実在し人事に関与するものなのである。しかも、そのような神々をも原子論の自然主義的・物質主義的な枠組みで説明可能であると考えている。パルメニデスにおいても、デモクリトスにおいても、ミュトスの扱い方は異なるが、単にその意義が方法論的な局面に限定されているわけではなく、哲学が脱神話化を通じて成立したという「ミュトスからロゴスへ」という単純な理解は必ずしも正確ではないと言わざるをえない。
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Research Products
(1 results)