2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510015
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
神谷 幹夫 北星学園大学, 文学部, 教授 (50194981)
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Keywords | illusion / sagesse / ruse / decroire / initiation / 意識 / 意味論 / 創造的読み |
Research Abstract |
われわれはアランのmanuscrit〔手稿〕をよく調べた(Definitions〔『定義集』--これについては、翻訳(岩波文庫、2003年)を出版した〕,Les Dieux〔『神々』〕そしてとりわけHistoire de mes pensees〔『わが思索のあと』〕の手稿を)。Robert Bourgneとのdiscussion, debatによって、これまでわれわれの意識にはあらわれていなかった重大な側面が照らし出された。そこから次のような知見を得た。 アランのアイスキュロス読みには創造的な意味、政治的な意味があること。創造的。すなわち《imageによる》分析、《especeのもとでの》省察というのは、《ruse〔奸知〕による》、あるいは《tromperie〔狡知〕の上での》ものであり、アランは、アイスキュロスの註解者たちが注目している、そしてそれをめぐってアイスキュロスにおける知の意味論的なフィールドがつくり出されているmetisとmekhaneを、(すなわちsagesse, prudence, ruse ; invention ingenieuse, habilite, artを)予料していた、あるいは予感していたように思われる。アランの炯眼は、信じる、かつ同時に信じないartがわれわれを危険にさらすところのruseの深みを、habilete obliqueを、見抜いているのは本当だ。ここにはある特異な、妙なるespeceの奸知〔ruse〕があり、そしてそれが狙っているのは、人間の叡知が神の叡知に身を沈めるinitiationの最高段階にほかならない。政治的思索。すなわち「政治」は魂が自己自身のうちで及ぼし、また蒙るところの力のなかで問題となっている意味では。illusionの問題は、われわれを政治的思索へと導く。
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