2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510042
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
安彦 一惠 滋賀大学, 教育学部, 教授 (20135461)
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Keywords | 公共性 / 効用 / 利他主義 / 民主主義 / 選好 / 倫理的還元 / 規範的人間観 / 国家観 |
Research Abstract |
「追加」で10月に交付内定があったため、申請テーマに関する今年度(初年度)の研究の進展は、資料収集等、研究環境の整備が中心であり、考察はまだ不十分であるが、これについても若干の「成果」があり、以下の「知見」を新たに獲得した。 1、「交付申請書」で国家について構成的国家観と統制的国家観とを対比したが、いわゆる社会的選択理論の展開をも、この対照に平行するものとして整理することが可能である。諸個人の選好を抽象的に選好一般としてその集計を考える行き方を基本とするとして、そこに選好の内容の観点を持ち込んで私的選好と社会的選好(これは私的諸選好の集計の結果をも意味するが、ここでは例えばハーサニが「社会的立場から」の選好と言う場合のものを意味する)とを区別し、いずれの集計化-いずれの場合も倫理的でありうる-を図るか、という基本対立がある。例えばセンは、抽象化的行き方および私的選好定位的行き方の両方を批判している(両批判は相互に異なるものである)が、問題はむしろ、共に個人のものである両選好の区別の妥当性である。 2、上の二つの行き方は、全ての選択(行動)に抽象化的に効用を想定するものと、いわば消費者主権的に(経済的)効用定位的選択のみを有意化するものとに対応するが、両方において使用されている「効用」概念は(広義・狭義と呼んでもいいが)相互に別である。この問題は端的には、「利他」の在り方に効用を認めるか否かという対立としても表れている。この対立の解消には「利他主義」の分節化が必要である。 3、両選好は経済的選好と倫理的選好としても区別されているが、この「経済的」「倫理的」の用法は実は混乱している。裏面に挙げた拙稿は、環境倫理のコンテクストで用法の分類・整理を試みたものである。
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