2004 Fiscal Year Annual Research Report
日本思想における聖性の表徴としての〈物語〉と〈景観〉をめぐる倫理学的基礎研究
Project/Area Number |
14510046
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
豊澤 一 山口大学, 人文学部, 教授 (10155591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 雅文 東亜大学, 総合人間・文化学部, 教授 (30330723)
柏木 寧子 山口大学, 人文学部, 助教授 (00263624)
木村 武史 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科・哲学・思想専攻, 助教授 (00294611)
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Keywords | 物語 / 景観 / 神仏習合思想 / 聖地 / 出雲 / 聖なるもの / 神の臨済 / 近世的主体 |
Research Abstract |
柏木は、昨年度に続き、神仏習合思想に基づく説話を採り上げ、聖なる存在をめぐる思索、またその形式としての<物語>を検討した。『神道集』物語的縁起のうち、とくに主人公が申し子である場合について、申し子を含んで成り立つ物語世界の全体構造、申し子という存在が担う機能、申し子の辿る一連の過程や物語の終極がもつ意味、等を考察した。 上原は、神の観念が生み出した<景観>が仏教移入によってどのような変化を遂げ、新しい<景観>を生むに至ったのかについて、経典の<物語>性にも着目しつつ考察し、その成果を単著『最澄再考』(ぺりかん社)の一部に組み入れた。また、神に関わる聖地<景観>における一般的構造の一側面を、出雲を含む全国の主な聖地<景観>のデータから明らかにした。 木村は、<景観>の意味付けの<物語>的表象は、「自然」を五感を通じて認識する人間的身体の位置と言語的特性が「聖なるもの」をどのように経験し、表象するかと密接に関係する問題であることを明らかにしつつある。 古代人の空間認識は言語資料を通じてしか分からないが、それらの<物語>表象は特定の場において、特定の場を想定して語られていることからも分かる通り、特定の場における文化的な宗教経験が<物語>的表象の背後にあると考えても良いであろう。その宗教経験とは特定の<景観>の経験を通じて神的出来事を想起し、そこに神の臨在を感じることのできる場と言っても良いであろう。 豊澤は、古代日本の<物語>の中世的解釈を基に近世的主体が成立する経緯を明らかにしつつある。その成立の際の、対抗するものとしての仏教と、依拠するものとしての儒学(その「天」「人倫」)という二契機の重要性を考察した。
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