2002 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀末から20世紀初頭のロシア法思想における神秘主義の影響に関する研究
Project/Area Number |
14510050
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉浦 秀一 北海道大学, 言語文化部, 教授 (50196713)
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Keywords | ロシア宗教思想 / ロシア法思想 / ロシア自由主義 / カヴェーリン / チェルヌィシェフスキー |
Research Abstract |
研究の初年度にあたる今年は、ロシア宗教思想関連の文献・資料調査に重点をおいた。二度にわたってロシアを訪問し、ロシア国立図書館(旧レーニン図書館)、モスクワ大学、サラトフ大学において資料調査、研究交流をおこなった。 またサラトフ大学とチェルヌィシェフスキー博物館の共催で開催された国際会議「チェルヌィシェフスキーとその時代」に日本側研究者の団長として参加し、報告「ドミートリー・カヴェーリンにおける理性の問題をおこなった。 研究の結果明らかになってきたのは、18世紀の70年代、いわゆる「ロシア啓蒙的民主主義」の全盛期に、その理論的指導者たちの中に、すでに理性に対する懐疑が生じていたことであり、この懐疑が19世紀末の宗教思想の復活と法思想との結合へと向かう潮流を育てたことである。この点を、ロシア自由主義の指導者でロシア法制史家でもあったカヴェーリンの思想展開に即して解明したのが上記国際会議の報告である。ロシア側の財政事情のために報告集の刊行は遅れているが、遅くとも今年秋には論集としてサラトフ大学とチェルヌィシェフスキー博物館から出版される予定である。 これと平行して、イタリアルネッサンスのネオプラトニズムの研究も引き続きすすめ、フィツィーノ、ピコ・デラ・ミランデロの思想分析をおこなった。この研究領域はまだ論説として発表するにいたっていないが、イタリア・ネオプラトニズムとロシア宗教思想との関連について概略はつかめつつあるので、近くその成果を発表する予定である。
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