2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510064
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡田 暁生 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (70243136)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊東 信宏 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (20221773)
藤野 一夫 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (20219033)
三木原 浩 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (70116177)
内田 正博 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10151888)
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Keywords | メロドラマ / シャンソン / 楽劇 / オペレッタ / オペラ / 映画音楽 / マイヤベーア / サロン音楽 |
Research Abstract |
本年度は計4回の研究会を催した。第一回は4月10日に行い、岡田がメロドラマの概念規定について、調査のオリエンテーションを兼ねて発表した。第二回は7月2日に再び岡田が、メロドラマ的音楽の特徴について、ショパンやリストやチャイコフスキーを例に発表した。第三回は12月2日に三木原が、シャンソンの歌詞を例に「メロドラマ的なもの」について発表した。第四回は1月20日に伊東が、19世紀末のウィーンのオペレッタのストーリーを例に、メロドラマとエクゾチズムの関係について発表した。 メロドラマの特徴の一つは、「無力な自己」への憐憫と神聖化である。これは18世紀までの演劇が王侯の世界観をあらわすものであったのに対して、19世紀以後生まれたメロドラマが庶民のものであったことと関係していると思われる。歴史の運命に翻弄される一庶民の波乱万丈の生涯を描くメロドラマには、次の要素が不可欠である。それは「歴史の荒波と無力な個人の対照」、「勝利と敗北」、「悲恋」である。 これらの要素が音楽形式に転用されると、次のようになる。即ち、楽曲は必ず「短調の激烈な部分」と「長調のセンチメンタルな部分」が交代するように出来ている。また後者は必ず-「襲いかかる運命」を象徴するように-唐突に不協和音で遮られるのも、メロドラマ的な音楽の特徴である。そして必ず、勝利の歓喜をあらわす輝かしい長調の楽想で閉じられる。19世紀の多くの音楽は、ソナタ形式や変奏形式といった従来の自律音楽的カテゴリーでは十分に分析できない。それらに必要なのはむしろ、「悲惨と情緒」「勝利と敗北」「喜びと悲しみ」といった、メロドラマ演劇から援用した分析カテゴリーであると考えられる。
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