2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510065
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山口 和子 岡山大学, 文学部, 教授 (90093476)
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Keywords | メタファー / 抽象表現主義 / シュールレアリズム / ニーチェ / 悲劇 / ロマン主義 / ロスコー / シェリング |
Research Abstract |
本年度は色彩論との関係からメタファー概念の歴史的変遷、及び現代の議論を研究する予定であった。異質な領域への概念の転移というメタファー概念は、基本的にアリストテレス以来現代にもうけつがれているが、それを言語の領域にとどめるか否か、そしてメタファーの役割を概念的論理的思考との全くの対局に置くか、あるいは補完的、活性化的役割を与えるかで基本的に議論が分かれている。芸術とメタファーとの関係を考える際に、現代の様々なまたメタファー論の中でも注目すべきはジョージ・レイコフのメタファー論であろう。彼は人間のコンセプトの体系形成における中核的な役割をメタファーに認め、それをニューロサイエンスからも基礎づけようとしているが、従来の哲学的思考の吟味をもその立場から試みている。人間の意識の働きに根元的なメタファー機能を認めるレイコフのメタファー論は、人間における芸術の役割はいうまでもなく色彩のメタファー性とその意味を再考する上で非常に重要である(この問題は2004年10月の美学会全国大会で発表)。 色彩のメタファー性を考える際に重要な現代作家は抽象表現主義のポロック、ニューマン、ロスコーであるが、彼等の創作の根底にあるシュールレアリズム的な動機、さらにその背後にあるフロイト的無意識、さらにその背後にあるロマン主義、特にロマン主義を体系的に表現した哲学者シェリングの芸術観の連続性は無視しがたい。なかでも、ニューマンの超越への志向、画面構成の原理である二原理(アポロン的、ディオニュソス的)の葛藤、悲劇性といった問題はまさにシェリングの問題と重なる。影響関係ではなく、抽象へと向かう、あるいは色彩の純粋なメタファー性へと向かうロゴスの端緒をロマン主義に認めることの可能性を今年度の研究によって確認し得たと考える。
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Research Products
(4 results)