2004 Fiscal Year Annual Research Report
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14510072
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Research Institution | Hokkaido Musashi Women's Junior College |
Principal Investigator |
中澤 千磨夫 北海道武蔵女子短期大学, 教養学科, 教授 (10198062)
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Keywords | 小津安二郎 / 小津 / OZU / 東京物語 / 日本映画 / 映画 / 映像分析 / 映像論 |
Research Abstract |
小津安二郎の作品中『東京物語』はもっとも多くの読者を獲得してきた。『Tokyo Story』がアキ・カウリスマキの方向性を決定し、映画監督誕生に導いたことは、よく知られたエピソードである。今年度の主要実績は「痙攣するデジャ・ヴュ-ビデオで読む小津安二郎-(9)『東京物語』-死の影の下に-」(『北海道武藏女子短期大学紀要』37)である。 『東京物語』は旅の物語。長時間にわたる鉄路による移動が、まだ人生そのものを象徴していたような高度経済成長以前の日本。 これまでの映像分析同様、ショットショットにこだわり小津安二郎の創作意識を明らかにした。それは、平山医院における消える消毒スタンドなどの具体例で指摘した。小津にとって重要なのは整合性よりも各ショットを絵として捉えることなのだった。それが小津という作家の美意識である。 この作品には死の影が色濃く投影している。直接的には物語の中で死んでいく平山とみ(東山千栄子)であるが、より大きな影として、戦地から帰還しない次男・昌二に象徴される先の大戦における膨大な死者を挙げよう。昌二は「戦死」と脚本に書かれているが、フィルムそのものを真摯に読む限り、昌二の死は確定したものではないという新説を提出した。位牌などがないからである。戦後8年間も宙ぶらりんの状態に置かれている昌二の嫁・平山紀子(原節子)は日本の多くの女を代表するファム・ファタール(運命の女)であった。
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Research Products
(1 results)