Research Abstract |
宮岡は,対象表面の滑らかさ・粗さを触ることによって知る微細テクスチャー知覚について研究し,触覚システムがローパスフィルタ特性を持っているらしいことを明らかにした。本研究は,この触覚系のローパスフィルタとしての特性を詳細に調べることを研究の目的とした。平成14年度には,(1)ローパスフィルタ特性を調べる実験を開始し,(2)平成15年度の研究に用いる運動制御装置を作成した。これらの内容について,以下に説明する。 (1)触覚系のローパスフィルタ特性測定実験:本実験では,波長6.7〜75.2μmの6種類の回折格子を刺激として用いた。これらの回折格子に指で触れ,溝に対し直角方向に接触部分を動かせば,皮膚には三角波状の振動が与えられることになる。この振動は,基本周波数がはっきり決まっており,それより低い周波数成分を含まない。従って,基本周波数成分が皮膚及び神経系のフィルタを通過すれば,その回折格子表面には何らかのテクスチャーが感じられるはずである。本実験では,6名の被験者がメトロノーム音を手がかりに,刺激の溝に直角方向に20mm/6の速度で,刺激に触れている指を動かした。そして,2つ1組の刺激のどちらを粗く感じるかを,二肢強制選択法により判断した。その結果,刺激波長が6.7〜33.3μmの場合はテクスチャー弁別が不可能であったが,刺激波長が50μmと75.2μmの場合は,テクスチャー弁別が可能であることが判明した。結局,波長33μm(指の移動速度が20mm/sの場合は601Hz)までの刺激は触覚系のフィルタを通過できず,波長50μm(指の移動速度が20mm/sの場合は400Hz)ではフィルタを通過できたということ,すなわち触覚系フィルタの通過限界周波数は400Hz〜600Hzの間にあることが明らかとなった。 (2)運動制御装置の作成:平成14年度の実験では,被験者が能動的に指を動かし,刺激に触れた。被験者は,訓練した上で実験に参加したが,指の移動速度にはある程度のばらつきが観測され,これが実験結果の精度を低くした可能性が考えられた。そこで,刺激移動速度を機械的に制御して,固定した指に受動触の状態で刺激を呈示する実験を計画した。平成15年度にこの実験を実施するために,平成14年度は,刺激の運動を制御する装置を作成した。装置は,DCモータにより刺激の搭載台を駆動する形式とした。DCモータの回転速度は,パーソナルコンピュータとDAコンバータによりコントロールした。その際,回転速度情報は,エンコーダとパルスカウンタによりコンピュータにフィードバックされた。
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