2004 Fiscal Year Annual Research Report
心的外傷経験が行動と情動に与える影響について:乳児院群と家庭群の比較
Project/Area Number |
14510120
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
数井 みゆき 茨城大学, 教育学部, 助教授 (20282270)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 聡美 国立精神神経センター, 精神保健研究所・成人精神保健部, 室長 (20285753)
森田 展彰 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (10251068)
後藤 宗理 名古屋市立大学, 大学院・人文社会学部, 教授 (90115569)
松村 多美恵 茨城大学, 教育学部, 教授 (70091866)
|
Keywords | アタッチメント(愛着)障害 / トラウマ反応 / 子ども虐待 / 保育士の認識 |
Research Abstract |
16年度においては、15年度に配布回収した質問紙データの分析を引き続き行った。虐待された乳幼児にとっては、PTSDの影響も確かにあるが、もう1つの重大な点である、関係性のゆがみや愛着障害についてはあまり分析されずにきていた。そこで、本研究はその後者を十分に取り入れた上で検討をしてきた。劣悪な孤児院などで見られる愛着未成立障害については、今回の家庭養育を受けている子どもを対象とした保育士による調査では、抽出されなかったのは当然といえば当然であろう。しかし、次の基準である、特定のアタッチメントは示すもののそれが深刻なまでに不健康な関係である安全基地行動の歪曲については、いくつかが因子として見つかった。特に明確な結果は、Self-endangerment(過剰な危険行動)やInhibition(抑圧)、あるいは、Vigilance/hypercompliance(親に対する警戒・過剰応諾)であった。また、無差別的友好態度も見られたが、これは、親を意識しながら行われているところで、いわゆる、愛着未成立障害の中の無差別的な友好性とは別個に考えられるものだろう。3番目の不健康なアタッチメント関係を示す「混乱性愛着障害」については、明確な結果が得られなかった。 トラウマ反応については、0-2歳の群でも3-5歳の群でも、心理的な虐待をされているのではないかと疑われる子どもにもっとも多くの特徴が保育者によって認識されていることがわかった。たとえば、心理的虐待がない子に比べて、その虐待がある子には画一的な遊びをする、過去が今起こっているような感じを受ける、用心深い、集中できない、気になる癖がある、からだの引きつりがある、等が顕著であった。次には身体的に虐待されたと思われる子どもも、類似の行動特徴を示すと認識されていた。虐待は単発で起こるよりも複数のタイプが混在して起こるので、症状の重なりはそのような背景を示唆すると思われる。
|