2003 Fiscal Year Annual Research Report
素朴生物学と素朴心理学の境界領域における現象・特性についての幼児の理解
Project/Area Number |
14510124
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
稲垣 佳世子 千葉大学, 教育学部, 教授 (90090290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多野 誼余夫 放送大学, 教養学部, 教授 (60049575)
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Keywords | 素朴心理学 / 特性推論 / 素朴生物学 / 身体的特性 / 心理的特性 / 特性の安定性 / 幼児の理解 |
Research Abstract |
本年度は心理的特性と身体的特性の概念を幼児が持っているかに焦点をあて実験をおこなった。心理的あるいは身体的現象が「もっともらしい」(そういうことがありそうで、かつそれをひき起す因果的特性ないし因果的過程が想定しやすい)と思える情報を与えた上で特性に関する帰納的投射課題をさせるという事態を用いて、次の点を検討した。(1)幼児が、心理的特性だけでなく、身体的特性に対しても、所与の場面を超えて「特性」を適用して他者の行動を予測できるという意味で「特性概念」をもっているか、(2)どちらの特性の場合も、特性概念をもつことが多いほど、特性を将来修正可能なものと考えるのが少ないといえるか。幼稚園の4歳児、5歳児各20名を対象に、登場人物に気質的な特徴をもつ身体的特性(例アレルギー体質)、心理的特性(例恐がり)を付与した物語りを与えたとき、その特性を、与えられた場面を超えてどの程度広く適用するかを3場面(near, far, very far)と2つの統制場面を用いて検討した。さらに上記の「特性適用課題」終了後、同じ幼児に特性の修正が将来可能か否かをたずねた。その結果次のことが明らかになった。 (1)5歳児では所与の特性を選択的に適用し、因果性の及ぶ範囲にあるより広い場面へと適用するが、それが及ばない無関係の場面へは適用しないという意味で特性概念を持つ。それは心理的特性だけでなく、身体的特性についても同じように認められた。4歳児では特性概念は発達途上であり、心理的特性の方が身体的特性よりも発達がやや早い傾向がみられた。幼児の日常生活では、心理的特性の名前の方が身体的特性のそれよりなじみがあることが関係しているかもしれない。 (2)特性の概念をもつことが多いほど、いいかえれば所与の特性をより広い範囲に適用できるほど特性の修正可能性を小さく見積もる傾向は4歳児、5歳児ともにみられたが、とくに5歳児の心理的特性に関してこの傾向が明瞭に認められた。
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