Research Abstract |
1.記憶の再活性化量と記憶定着に関わる知見との関係の学際的検討 水野(1996-2001)は,分散効果の原因が記憶の再活性化量にあるとする再活性化説を提起し,その妥当性を数多くの実験で検証してきた。本年度はこの再活性化説が,(1)処理水準,(2)リハーサルという分散効果以外の記憶定着の知見をも合理的に説明しうるか否かを学際的な方法で検討した。 その結果,(1)従来処理水準説によって説明されてきた形態・音韻・意味処理による再生率の違いが,再活性化説でより合理的に説明・予測可能であること(水野,2003a,b,d-次頁掲載順にalphabet添付),(2)これまで不明だった維持リハーサルと精繊化リハーサルの再生率の違いが,再活性化説で極めて合理的かつ具体的に説明可能であることが示された(水野,投稿中)。 2.再活性化量を多くする改良Low-First方式で定着した記憶の持続性,均質性等の検討 改良Low-First方式とは,再活性化説を基に考案した,学習毎の再活性化量を多くして効果を高めようとする分散学習方式である。本年度は上の基礎研究と並行し,これを教育実践で利用する準備として,この方式の(1)効果の持続性,(2)効果の均質性,及び,より実践的な,(3)やる気への影響を実験的に検討した。 その結果,この方式の効果は,(1)長期間持続し水野,2002b),(2)均質であること(水野,2002c)が明らかとなるとともに,水野(2002b)ではその長期的効果を予測するモデルも構築した。さらに,この方式を適用したCAIでの学習実験・調査からは,この方式が,(3)効果・効率だけでなく,学習者のやる気をも高めることが明らかとなり(水野,2002a,e,2003c),この方式が,教育実践での利用に足る頑健性と実用性を有することが明らかとなった(水野,2002d)。
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