Research Abstract |
本研究は,「単位」の萌芽的概念が面積(大きさ),長さ,容量などに関する判断において,どのように形成され,それが子どもにおける数学的思考の発達とどのように関わっているかを検討した。具体的に,面積と長さの比較に関して,幼児期の子どもがどのような外的な手がかりや操作(方略)を自発的に利用するのか,そして,その利用が発達とともにどのように変化するのかを調べた。 本年度は,3歳から6歳の幼児を対象に,次のような課題を実施した。まず,長方形の図形ペアを用意し,一方の図形に関して,その面積の10%にあたる部分を,正方形または2等辺三角形になるように切り取った。そのような図形ペアを16組用意し,その大小を次の条件で判断させた。1.操作条件:図形を手に持って,自由に比較し,判断する。2.知覚条件:左右に並べた図形について知覚的に判断する。3.重ね合わせ条件:目の前で相互に重ねた図形について判断する。 その結果,以下のことが見出された。1.操作条件では,年齢による正しい判断の数に違いはなかったが,知覚条件,重ね合わせ条件では,5〜6歳児が他の年齢の幼児よりも正しく判断した。また,5〜6歳児では,操作条件よりも,重ね合わせ条件で,正しい判断が多かった。2.すべての年齢を通して,周囲の長さから図形の大小を判断したと思われる反応は少なかった。3.操作条件では,5〜6歳児が,3〜5歳児よりも,図形ペアを重ね,縦と横の2次元で図形の方向を調節する方略を使用する頻度が多かった。
|