2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510164
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Research Institution | Bunkyo Gakuin University |
Principal Investigator |
下條 英子 文京学院大学, 人間学部, 教授 (30231137)
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Keywords | 情動 / 選好判断 / 眼球運動 / 顔知覚 / 魅力 |
Research Abstract |
情動的判断、特に選好判断(「好き」という自覚的判断)は、生物学的にも心理学的にも最も基礎的な心理機能であるが、判断が本質的に主観的であることから、客観的科学的な解析が困難な一面があり、認知神経科学でも、こまでもっとも遅れていたテーマである。この困難なテーマへのひとつの有力なアプローチとして、「自覚的な判断に先立つ身体的な前駆兆候(somatic precursor)は何か」という問いがあり得る。とりわけ「ヒトおよび動物の情動は、基本的に接近-回避を両極とする一次元軸上で作用する」(A.Damasio)ことから、身体の定位反応、中でも眼球の定位運動は有力と見られる。そこで我々は「自覚的な選好判断に先立つ眼球運動のパターンから、その直後の判断が予測できるか」という問題を立て、健常成人の選好判断課題(強制二肢選択)遂行中の、眼球運動を計測した。その結果、ボタン押しによる選好反応に1秒弱先だって、最終的に選ぶ側への注視確率が急激に上昇していき、80-90%のレベルに達したところで自覚的判断/反応がなされる、という「視線のカスケード効果」を見いだした。さらにこのパラダイムを使って、次の事実を見いだした。(1)顔刺激だけではなく、幾何学図形でも、同様の効果が見られる。(2)ただし、この効果は選好課題に限定され、より丸顔の方を選ぶ課題や、より「魅力的でない」顔を選ぶ課題では見られない。(3)判断が困難な方が効果は大きい。(4)ふたつの顔刺激を異なる時間提示することで注視を操作すると、被験者の選好判断をある程度操作できる(60%の確率でより長く提示/注視した方を「より魅力的」と判断)。これらの結果は、記憶(attractiveness template)と定位メカニズムとの間に、相互促進性のフィードバックが働いていることを示唆する。以上は、別記英語論文として公刊した。現在はさらに、商品など他の刺激、2肢ではなく4肢強制選択の場合、EEGによる脳活動計測、などの方向で研究を継続中である。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Shimojo, S., Simion, C., Shimojo, E., Scheier, C.: "Seeing and Liking : Gaze Cascade towards Preference"Nature Neuroscience. 6. 1317-1322 (2003)