2003 Fiscal Year Annual Research Report
価値-行動の公正媒介モデル:社会的同一視による分配結果と手続きの統合的研究
Project/Area Number |
14510176
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
竹西 亜古 甲子園大学, 人間文化学部, 助教授 (20289010)
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Keywords | 心理的公正 / 手続き的公正 / 社会的アイデンティティ / 向集団行動 / SEM |
Research Abstract |
本研究は、最終年度前年度申請によって再構築されたものである。前研究(課題番号11610149)では、心理的公正と結びつく価値の側面(成員性価値・利益性価値)に焦点をあて、公正認知者の社会的同一視程度が、公正と価値の結びつき方を決定する要因であることを示した。このことを踏まえ、本研究では、そのような価値と結びついた公正感が、公正認知者の行動を規定する過程を中心に検討を進めてきた。その中で、本年度は、前年度明らかにされた、公正認知者の社会的アイデンティチィの構造ならびに機能について、さらなる検討を行った。本年度の研究目的は、1)公正と結びつく社会的アイデンティティ構造の再検討を通じて、集団への愛着・集団地位の査定・成員性意識の3側面モデルの頑健性を示す。2)それらの側面が、主張性とコストによって分類された向集団行動と、公正判断の間を媒介するモデルを検討する、の2点である。本研究では、これらの目的を、国民としてのアイデンティティならびに国政権威評価の場面で検討した。データは、有権者名簿に基づく無作為二段抽出により、京都市民700標本を対象とした調査から得られた(調査実施平成16年1月、有効回収数446)。目的1)の検討は、「愛着」「地位」「意識」からなる3因子モデルを検証的因子分析で解析することによった。AMOS5.0を用いた解析の結果、x2=29.934,df=24,p>0.1となり、適合が認められた。その他の主たる適合度指標は、GFI=0.983,CFI=0.996,RMSEA=0.025となった。因子相関は、愛着-意識r=0.73,意識-地位r=0,29,愛着-地位r=0.42であった。この結果は、前研究によって得られた結果と一致する。目的2)に関しては、同じデータを用い、共分散構造分析(SEM)を用いて、複数の社会的アイデンティティ媒介モデルを検討した。その結果、集団への愛着を媒介とするモデルが、権威に対する公正査定と向集団行動を媒介するモデルとして、特に有効であることが明らかになった。同時に、向集団行動の種類によっては、高い公正査定そのものが向集団行動と結びつく事実も示された。一例を挙げると、向集団行動として、他の国民に対する支援行動に至るモデルの場合、「他成員のために、できる範囲で積極的な支援を行うこと(高主張的低コスト支援行動)」では、愛着媒介ルートが有効であった(CMIN/DF=1.572,GFI=0.980,CFI=0.989,RMSEA=0.038:公正-愛着γ=0.204,愛着-行動γ=0.383)。一方、「他成員のために既得利益の縮小を受け入れること(低主張的高コスト行動)」では、権威の公正さの査定が、行動を直接的に動機づけることが明らかにされた(CMIN/DF=0.537,GFI=0.993,CFI=1.00,RMSEA=0.000:公正-行動γ=0.442,公正-愛着γ=0.205)。次年度は、研究最終年度として、これまでに得られた知見を統合し、公正の意味としての価値、ならびに、公正の機能に関する社会的アイデンティティの役割について考察する。
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