2004 Fiscal Year Annual Research Report
価値-行動の公正媒介モデル:社会的同一視による分配結果と手続きの統合的研究
Project/Area Number |
14510176
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Research Institution | Koshien University |
Principal Investigator |
竹西 亜古 甲子園大学, 人間文化学部, 助教授 (20289010)
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Keywords | 公正判断 / 手続き的公正 / 国政権威 / 社会的アイデンティティ / 向集団行動 / 権威支持 / 援助行動 |
Research Abstract |
本研究は、国政権威者に対する国民の公正知覚が、国という集団の一員としての社会的アイデンティティにおよぼす心的影響過程、さらには、形成された社会的アイデンティティが国民の向集団行動生起に結びつく過程を検討することを目的としていた。本年度は、研究計画最終年度にあたり、前年度までに得られた知見の総合的な整理と位置づけが行われた。加えて、それらを踏まえた新たな解析が加えられ、報告書作成が行われた。本研究で得られた成果の第1は、国政権威のとる手続きに対する国民の公正判断が、向集団行動の生起に2つの心的過程で影響することを明らかにした点である。ひとつのルートは、公正判断が直接向集団行動の生起を促す過程、もうひとつのルートは、国民としての社会的アイデンティティを媒介して、向集団行動を促進する過程である。第2の点は、向集団行動の種類によって、いずれのルートが優位になるかに差異を見いだしたことである。本研究では、向集団行動を、ます、対権威支持行動と対成員援助行動の2つに分類、さらに、それぞれを主張性とコストの高低で4分類した。その結果、対権威行動では、一般的には公正判断からの直接ルートが優位であるが、権威による新たな負担を受け入れる行動(低主張高コスト行動)では、社会的アイデンティティの媒介性が認められた。一国民としての他の国民に対する援助行動では、社会的アイデンティティ媒介ルートのみが認められた。このことは、国政権威を公正と判断することが、国民としての社会的アイデンティティを高めることを通じて、他の国民を援助支援する動機を高揚させることを示している。研究成果の第3は、社会的アイデンティティには、集団への愛着・集団成員としての自己意識・所属集団の地位査定・集団内での自己位置の4側面があることを示したことである。さらに、この4側面は、国政権威と向集団行動を結びつける媒介有効性において差があり、集団への愛着がもっとも広範囲な向集団行動を媒介することが明らかになった。本研究は、前研究を再構築した研究(最終年度前年度申請により採択された研究)であったが、前研究での知見を基盤により深い検討と解析が行われ、国政権威への公正判断が国民の行動にもたらす影響、さらにはその心的過程を明らかにし得たといえる。
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