2002 Fiscal Year Annual Research Report
投票行動の社会心理学的要因:現代日米トレンドの比較
Project/Area Number |
14510183
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
梶原 晃 神戸大学, 経済経営研究所, 助教授 (70243368)
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Keywords | 投票行動 |
Research Abstract |
本研究では投票に関して以下のような点を再確認した。合理的選択理論の立場から、各個人の投票参加のモデルを、R=(BP各個人の投票行動が選挙結果に影響する可能性(主観的判断))-(C投票に伴う心理的コスト)+(D心理的利益)とし、一人の投票が選挙結果に影響を与えることは殆どないので、BPは常にほぼ0であり、またCは選挙毎にほぼ一定なので、主にDが時間とともに変動し、各個人の投票行動を第一に規定すると考えられる。Dには社会構造的利益と個人的・心理的利益という2つの要素がある。社会構造的利益とは、地域の政治家、地域社会、あるいは労働組合に対して義理や責務を果たすことから得られる利益である。他方、個人的・心理的利益とは個人的な選考・関心により規定される満足感である。この個人的な選好・関心は心理学的諸要因により規定される。先行研究によれば、権威主義的傾向が強いほど、あるいは自尊心が低いほど投票しやすい傾向がある。そうした人々は、伝統的社会規範を守り、権威者に対して正当性を認める傾向が強いからである。さらに、集団圧力やサンクションの効果も、心理学的特性によって変わってくる。以上の議論より、日本における投票率の低下に対して、社会構造的利益と個人・心理的利益に対応する2つの理由を考えることができる。まず、近年、職業の移動性や都市化が進み、さらに、国内政治よりも国際政治に関心が移り、結果として、コミュニティからの投票圧力が弱まった。このため、従来コミュニティから得られた社会構造的利益が小さくなり、Dを左右しなくなったかもしれない。次に、政治スキャンダルや小政党の林立といった最近の政治状況にうんざりし、国民は政治に関心を失っている。権威主義的傾向の低下や、自尊心レベルの向上とあいまって保守的な社会的価値が変化していることも心理的利益を減じていると考えられる。
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