2003 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化に伴うエスニック・コミュニティの生成・変容過程に関する比較社会学的研究
Project/Area Number |
14510189
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
魯 富子 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助手 (30303572)
|
Keywords | 新移民者 / コリアン・コミュニティ / エスニック・組織 / 移民1世 / アソシエーション |
Research Abstract |
平成15年度は、主としてハワイに居住する在米コリアンを取り上げ、調査研究を行った。その結果、2種類の移民形態に関わってコリアン・コミュニティが形成されていることがわかった。 (1)1903年に、韓国から最初の移民102人がホノルル港に到着して、1905年まで約7千人がハワイへやってきた。当時、ハワイヘきた移民者には独身の男性が多く、ハワイの日本人に対して否定的で、農場で日本人のストライキの防止に関わったという。初期の移民者は洞会という農場の自治組織や親睦会、そしてキリスト教会を中心とする韓国人同士の共同体を形成した。その後、韓国人は、主にホノルル市中心部で居住地を形成し、洋服店や洗濯業、靴修理店などの都市の自営業者へと変わっていた。現在、1903年の移民者の子孫は既に3世や4世にまで世代交代が進みつつあるなかで、1965年以後、韓国からやってきた新たな移民1世がハワイ社会に流入するようになった。(2)新移民者の流入によってコリアンの人口は、1970年の7,201人、1980年の11,893人、1990年の24,454人へ増加するようになった。新移民者の多くは、ホノルル市を中心とする都市部で、主に小規模の自営業に携わっており、新移民者同士で仕事を軸とするネットワークを形成している。現在、コリアン・コミュニティの中心は、主に新移民1世である。新移民1世の多くは初期の移民者と同じく、キリスト教会に関わっているが、近年、仏教系のお寺(Mu Ryang Sa 1975年)やカトリック教会(1974年)の信者も増える傾向にあり、宗教組織の多様化も進みつつある。宗教組織だけではなく、新移民1世は、コリアンを成員とする多様なエスニック組織を顕著に形成している。例えば、ハワイ発行の中央日報(http://www.joonganghi.com)によると、推定100以上のコリアンのエスニック組織があるという。現在、コリアンのエスニック組織として年齢(老人会、長寿大学)、地縁(忠清郷友会)、性別(KA Women's Club)という属性的な絆に基づく組織から、趣味(ハワイ韓人美術協会、ハワイ韓人体育会、ゴルフ協会)、職業的地位(ハワイ韓人商工会議所など)という獲得的な絆に基づく組織までみられている。こうしたコリアンのエスニック組織は親密な個人のネットワークを基底にしながら、特に趣味や職業的地位に基づくアソシエーションが活発である傾向をみせている。
|