2004 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化に伴うエスニックコミュニティの生成・変容過程に関する比較社会学的研究
Project/Area Number |
14510189
|
Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
魯 富子 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助手 (30303572)
|
Keywords | コリアンコミュニティ |
Research Abstract |
平成16年度は、主として1>名古屋の在日コリアンと2>ハワイの在米コリアンについての調査研究を行った。その結果、それぞれのホスト社会の状況の相違によって形成するエスニック・コミュニティが異なっていることがわかった。 1>日本の地方都市におけるエスニック・コミュニティの一例として、名古屋市の在日コリアン(オールドカマー)と新来韓国人(ニューカマー)を取り上げる。名古屋市の在日コリアンは、戦後名古屋駅西に闇市場を形成し、集中していたが、現在は名古屋市全域に分散している。空間的に分散された在日コリアンは、各自で地域社会に適応しながら、多様な民族組織を基軸とする個人のネットワークでつながっているといえる。一方、名古屋市の新来韓国人は、出稼ぎ労働者、留学生、サービス業従事者などからなっている。1990年代に入って、名古屋市都心部を中心として飲食店や食材店などのエスニック・ビジネスを起業していく傾向がみられている。また、新来韓国人の増加に伴ってキリスト教会も増えつつある。新来韓国人の社会的地位に伴って、それぞれ属するキリスト教会が異なっている傾向をみせている。キリスト教会を中心とするネットワークは新来韓国人にとって、精神面でも生活面でも有益なものになっている。本調査研究は、名古屋市における在日コリアンと新来韓国人は、同じ民族であっても相互関係が少なく、それぞれ独自にエスニック・ネットワークを形成していることを示しているといえる。2>つぎに、在日コリアンと比較するために、ハワイにおける在米コリアンを調査した結果以下の知見が得られた。具体的に、(1)新来韓国人は移民生活の安定に伴って、趣味やスポーツなど、よりアソシエーショナルな組織を形成していく傾向がみられること、(2)新来韓国人は宗教組織において個人的な親密な関係を築き、そこから目的別・機能別の小グループを形成していること、(3)新来韓国人個人は複数の民族組織に関わっていること、(4)新来韓国人は民族組織を通じてコリアン・コミュニティにかかわっていることなどが挙げられる。ハワイの新来韓国人が必要とする職業上の情報や相互扶助は職業組織ではなく、むしろ地縁組織や同窓会組織、趣味組織から得ているといえる。
|
Research Products
(1 results)