2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510191
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宝月 誠 京都大学, 文学研究科, 教授 (50079018)
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Keywords | 逸脱 / シカゴ学派 / 社会解体論 / 差異的接触論 / 抑止論 / クリフォード・ショー |
Research Abstract |
アメリカ社会学の逸脱研究史の中から本年度はシカゴ学派を取り上げた。シカゴ学派には逸脱研究の主要な3パラダイム(構造論・社会過程論・行為論)がすべて未分化な姿で含まれている。そのなかから構造論をクローズアップしたのが社会解体論であり、社会過程論は差異的接触論に、さらに行為論は抑止論や自己コントロールとして純化されていく。しかし、こうした純化はシカゴ学派が本来有していた逸脱研究の総合的な視点を弱める結果となっている。逸脱行為は単に社会構造の機能不全や、逸脱的な行動様式や価値観を有する人との相互作用によって生み出されるものでも、ネガティブサンクションを考慮して選択される功利的な行為だけではない。逸脱の理解には社会構造・社会過程・行為を統合した視点を必要としているが、初期シカゴ学派の具体的なモノグラフでは少なくともこうした立場から研究がなされていた。その典型的な研究はClifford R. Shawの非行率の地域的な差異の計量的な分析のみならずライフヒストリーを活用した一連の研究に見出される。彼はしばしば社会解体論と社会過程論の折衷だと批判されているが、彼こそ逸脱の研究には統合的な視点が重要であることを理解し、実践した人物である。彼がこうした視点を保ちえたのは、The Chicago Area Projectにかかわり、逸脱現象が単純なものではないことをよく知っていたことにもよる。彼と異なってその後の研究が特定のモデルに偏っていったのは、なによりも特定の理論的視点を鮮明に主張することで、独自性をアピールしたかったためであると、知識社会学的には解釈される。この点はJames.Short教授とのシカゴ学派の逸脱研究についてのインタビューの証言からも裏付けられる。
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Research Products
(2 results)