2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510191
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
寳月 誠 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (50079018)
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Keywords | 逸脱理論 / アメリカ社会学 / 構造論 / 相互作用論 / 行為者論 / フラクタル |
Research Abstract |
1920年代のシカゴ学派から20世紀末までの約80年間のアメリカ社会学における主要な逸脱研究の過程は、20年代から30年代のシカゴ学派、40年代から60年代のアノミー論や構造機能主義、60年代から70年代半ばまでの闘争・リベラル理論、70年代半ばから90年代の実証主義、90年代から現在までの統合理論に一応区分される。これらの時期を通じて、基本的に3つの逸脱理論が交代で台頭し、その対抗と循環を通じて、洗練されてきた。その過程は、理論の未分化状況から構造論・相互作用論・行為者論の分化→構造論の台頭→相互作用論→構造論・行為者論→構造・相互作用・行為者論の統合、としてパターン化できる。このパターンから、理論展開を左右する要因として、以下の知見が得られる。 1.理論の進化は経験的妥当性の反証によってもたらされるものではなくて、アボットのいうフラクタルの原理、例えば実証主義の中から解釈主義の立場が生まれたり、解釈主義から実証主義の傾向が強まることで、対立的な方法論が乗り越えられることによって可能となる。 2.理論のcreativityは限られた理論パースペクティブ(構造論・相互作用論・行為者論)中で、既存理論の再解釈が加えられ、その交代や統合として生じる。 3.理論の交代を促す要因はそれぞれの政治・経済状況の変革期によって影響されるのみならず、学派間での闘争や個人間の競争によってもたらされ、理論の差異化が進む。 4.学派内でのコリンズのいう「相互作用儀礼」の密度の高さや大学の威信は理論の影響力の持続を左右する。特に「相互作用儀礼」の活発な研究者集団ほど影響力は持続する。 5.一連の要因の中でcreativityの大きな契機は、研究者間の闘争・競争であるが、その場合でも基本的な理論的パースペクティブの枠内で、対抗理論を意識しながら既存の理論の再解釈を図ることから理論は生み出される。
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Research Products
(4 results)