2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510196
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
樫澤 秀木 佐賀大学, 経済学部, 助教授 (60214293)
|
Keywords | 討議デモクラシー / 紛争処理 / コミュニケーション |
Research Abstract |
文部科学省科学研究費の給付期間は、平成14年度から4年間である。2年目に当たる平成15年度は、主として理論的研究と基礎資料の収集に当てられた。研究実績は以下の通りである。 1.環境紛争については、そのコミュニケーションのあり方に着目して分析すべきであると筆者は考えるが、この分析に際しては、近年言われるようになった「討議デモクラシー」の考え方が大いに参考になる。したがって、今年度は、「討議デモクラシー」に関する理論的検討に重点を置いて研究した。 2.この考え方によれば、デモクラシーの本質的要素は、多数決による決定の産出でもなく、あいまいな「世論」に依拠した決定の産出でもなく、選挙などによる人々の間接的(擬似的)な承認に裏付けられた決定の産出でもない。むしろその本質的要素は、決定過程においてどれほど充実した実質的討議が行われたかという点にある。 3.上記のような「討議デモクラシー」の観点は、環境紛争で住民や環境保護団体(以下、「住民など」と略記する)が主張している要求と大いに重なる。つまり、住民などは、開発を行うか否かという実体的論点と並んで、あるいはむしろそれ以上に、決定過程において住民などの懸念や危倶が十分考慮され、的確な論拠をもって解消されているかを問題としているのである。 4.以上の理論的検討に基づいて、今年度は、「熊本県川辺川住民説明会」の資料収集と現地調査を行った。この「川辺川住民説明会」は法律上求められているものではないが、事業を推進する国土交通省と住民側代表が対立点について、公開の場で議論を戦わせるという、日本での「討議デモクラシー」の実験と位置づけられるものである。
|