2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510220
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
南 保輔 成城大学, 文芸学部, 助教授 (10266207)
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Keywords | 海外帰国子女 / 通文化的人間形成 / 教育・職業経歴 / 社会再生産 / 社会的アイデンティティ / 調査倫理 / 言語運用能力 / 勤労倫理 |
Research Abstract |
海外帰国家族を対象に、日本国内(首都圏と関西圏)とアメリカ合衆国において、29回にわたる面接インタビュー調査を実施した。その教育・職業経歴について本人あるいは家族を通じて経験的な素材(データ)が得られた海外帰国子女は43人に上る。現在インタビュー録音を文字化して内容を検討するという作業を進めている。これまでに明らかになった点でまず目を引くのは、調査対象者の大多数が日米の有名大学に入学していることである。日本では、中学・高校・大学のいずれかへの入学時に帰国子女枠を利用したり、優れた英語力を生かしたりしている。対照的に、その英語力が日本国内での就職プロセスにおいて重要だったと思われる事例はそれほど多くはない。専攻や職種、業種として、コンピュータシステム関連が多いという印象を得たが、これがIT化という時代の流れのためか海外経験がなんらかのかたちで関係しているかははっきりしない。印象的だったのは、大学生や社会人となった子どもを持つアメリカ在住の母親の何人かが、子どもの小中学校時代に日本(語)の学習を重視しすぎたと考えていることだ。毎週末の補習授業校のために親子でかなりの努力をしていたが、やりすぎだったのではないかという心情が吐露された。また、日本の大学入試プロセスが勤勉さという習性を形成するという可能性が指摘されてきたが、アメリカの教育慣行においても努力が評価され奨励されている面がうかがえた。調査対象の全体像をどうやってつかむかは質的調査にとって永遠の課題だが、この問題に対応する準備として、調査協力確保が調査の倫理と深く結びついているという点を検討した。サーベイ調査の回答率が良くても7割という事実と、質的調査においては協力拒否者についての情報があることとを照らし合わせると、質的調査がそれほど決定的に不利であるとは言えないという結論にいたった。
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