2003 Fiscal Year Annual Research Report
規制緩和による経営合理化と労使関係の変化に関する実証的研究
Project/Area Number |
14510229
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
河西 宏祐 早稲田大学, 人間科学部, 教授 (20015837)
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Keywords | 規制綬和 / 私鉄産業 / 労使関係 / 経営合理化 / 労働組合 |
Research Abstract |
1,研究課題を遂行するために、2001〜2002年にかけて全部門で規制緩和が行われた私鉄産業を対象として調査研究を行った。規制緩和による労使関係の変化が把握しやすいからである。調査研究の結果、以下の諸点が新たな知見として把握できた。 2,私秩産業は乗客数の減少による累積赤字に加えて、規制緩和による他業種からの新規参入、路線決定・料金設定の自由化など、市場境争が激化しており、経営側は深刻な経営危機に直面している。経営合理化は予想を超える厳しさで進められており、とりわけ人件費の削減(賃金切下げ、諸手当廃止、退職金の切下げなど)が焦点となっている。 3,労働組合は「雇用か労働条件か」という二者択一に迫られており、苦しい立場に立たされている。結局、「雇用と職場を守る」を最後の一線として踏み止まるために、労働条件の低下はあえて甘受する方針を採っている。 4,以上の結果、従業員(組合員)の不満は労使双方に向けられており、勤労意欲の低下が深刻な問題になっている。労使双方は、この対応策に苦慮している。 5,他方では新たな労使関係が形成され始めている。厳しい経営合理化によって人件費の削減効果が現れ始め、事業収支が黒字転換したことを転機として、経営側は労働組合と協力して規制緩和を乗り切る方針に転換し始めている。組合側は規制緩和を新たな事業展開のチャンスととらえ、労使協力によって積極的経営へ打って出ることを提起している。また従業員(組合員)のモラールの向上のために、労使協力によって新たな人事考課制度を作り始めている(考課項目・考課結果の公開、面談による指導など)。 6,これらの変化が、今後どのように展開していくか。これが今後の研究課題となる。
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Research Products
(1 results)