2002 Fiscal Year Annual Research Report
子どもの意見表明権の発達思想的基礎付けとその法哲学的および法解釈学的意味
Project/Area Number |
14510269
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
世取山 洋介 新潟大学, 教育人間科学部, 助教授 (90262419)
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Keywords | 国連子どもの権利条約 / 子どもの意見表明権 / Vygotsky / Freud / 性教育 / 学童保育(の廃止) |
Research Abstract |
本研究は、子どもが大人との間で持つ一定の質の関係性を権利として保障するものとして国連子どもの権利条約第12条に規定される子どもの意見表明権を論証することを目的としている。本年度は、基礎部分と応用部分に関して以下のような成果を得た。 基礎部分については、第1に、Vygotsky心理学に基づく発達心理学的基礎付けの可能性を検討し、その結果、それが可能であることを確認した。論文はまだ公表していないが、執筆を終了している。現在、投稿先を検討中である。第2に、人格の全面的および統合的な発達を権利としてみなす「成長発達権」理論を、子どもと大人との関係性を子どもの権利の本質としてみなす「関係論的子どもの権利」論が発展させるものであり、それが、国家への忠誠の調達の手段として公教育をみなす近年の日本政府内部の議論(典型的には、教育基本法改正にかかわる中教審答申)に対する強力なカウンターとなりうることを確認しつつある。 応用部分については、子どもの性および学童保育の領域において、「関係論的子どもの権利」論の具体的な場面での実効性を検証する作業を行い、二つの論文を公表した。その結果、子どもの性に関連しては、既存の自己決定アプローチおよび利益アプローチの双方に欠落している次のような問題に関係論的権利論が実効的に対応することができることがわかった。第1に、人格への性の統合を可能にする大人との応答的な関係性の実現を権利として主張できること。第2に、そのような統合に関わって特別な困難に直面している子ども(性的搾取を受けた子ども、妊娠している子ども等)「優れた助言者」を得る権利を主張できること。また、学童保育に関連しては、優れた指導員との関係性を権利として主張することが可能となり、近年のモードである子どもの自律を強調した全児童対策が、権利を後退させるものであることを明示的に論拠付けることが明らかとなった。
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