2004 Fiscal Year Annual Research Report
地域社会と学校区モデル-中等教育制度の地域的組織的設計に関する総合的研究-
Project/Area Number |
14510281
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三上 和夫 神戸大学, 発達科学部, 教授 (80093467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末冨 芳 福岡教育大学, 教育学部, 講師 (40363296)
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Keywords | 中等教育 / 高校通学区域 / 公私立学校間関係 / 高校通学区域設定 / 学校のアピアランス / 生徒の主体的対応としての「せぶみ」 / 学校生活を通じてのシティズンシップ形成 / 選択過程にあらわれる学校特性 |
Research Abstract |
本研究によって、中等教育の後半部分としての高等学校を、公立私立の選択肢の中で選ばれた学校への主体的活動である就学から、系統的に捉えることが可能になった。第一に、授業等学校活動において、生徒が学校を活動の場として取り込み、また教師との関係づくりの間合いをはかりながら継続されている動的過程である。第二に、意識調査を通じて、生徒や父母が学校と学区を価値評価してゆく尺度設定と相互関係が解明できた。 選択した学校への肯定意識と学校活動における意欲とは、設置主体や自己選択によって一義的に決定されるのではない。多面的で多義的な制度へのコミットメント(「せぶみ」)や、学習をはじめとする学校生活における個性形成において選ばれ確立されてゆく、間接的で媒介的な価値意識である。本調査では、これらの複合的な価値尺度と意識形成の過程を追跡する方法が確保されたが、今後さらに異なる設置主体間の相互比較や、歴史を異にする学校文化の相互比較など、吟味すべき課題も出てきた。 調査の三年間は、少子化の進行のもとで、通学区域設定や公私間関係の調整が、地域政策課題として話題化された時期であった。本研究では、教育行政の側から施策が提案され実施される経緯について、直接的に施策の価値分析をするのではなく、制度選択と学習と価値形成に影響を与える学校組織という媒介条件にこだわって追跡してきた。その結果、地域社会の中でのさまざまな学校の「アピアランス(見え方)」は、深いところで学校のトータルな価値提示と組織構造に繋がっていることを解明しえた、と考える。
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