2002 Fiscal Year Annual Research Report
「日本型学校モデルの可能性」-教師役割の改革とサポートシステム-
Project/Area Number |
14510298
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
油布 佐和子 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (80183987)
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Keywords | 日本型学校モデル / 学校スリム化 / 教師の多忙 / 教師と生徒の絆・関わり |
Research Abstract |
欧米と比較したとき、教師と生徒の「絆」や「関わり」が強調される関係性の中で全人教育が行われていることが、わが国の学校教育の特徴として指摘されてきた。しかしながら近年、こうした「日本型学校モデル」は「学校スリム化」「学校機能縮小論」論者から再考を促されており、また、教師の多忙化問題の原因としても批判されている。 本研究は、学校や教師の多忙状況を考慮して、学校と保護者・地域・諸機関とのどのような共同関係があり得るのかを探り、「日本型学校モデル」の可能性を検討する事を目的としている。 平成14年度は、文献収集と、福岡都市圏を中心とした事例の聞き取り調査・カリフォルニアでの学校研究者へのインタビューを行った。その結果、研究遂行の前提となる点での、極めて重大な問題が明らかになった。 第一に、「『日本型学校モデル』はわが国独自のものである」という認識そのものが疑わしいということである。カリフォルニアでは、移民や低所得層出身の低学力の子どもに十分な教科指導を行うために、教師が頻繁な家庭訪問を行い、地域との連携の下で指導を行っている。全人教育という理念、教師と生徒の「絆」や「関わり」を強調する「言説」は別にして、問題を有す生徒には教科指導のみならず生活全体に関わるという教師の構えには、日米で共通するものが見られた。 第二に、わが国では本年度より週5日制・新学習指導要領の実施により、教育現場が大きく変動し、たとえ「絆」や「関わり」が強調されたにせよ、そうした時間が作り出せない状況が現出している。 現在、研究過程で現れたこうした問題を考慮して、研究枠組みを修正し、「日本型学校モデル」という概念の検討を主とするか、或いは、生徒指導から必然的に生じる連携という問題に焦点を当てるか、次年度のポイントを絞っているところである。 なお、本年度は上述した事由から、研究成果を出版するところにまでは至っていない。
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