2004 Fiscal Year Annual Research Report
14〜15世紀における畿内在地領主の政治的動向-和田家文書の分析を中心に-
Project/Area Number |
14510360
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
市澤 哲 神戸大学, 文学部, 助教授 (30251862)
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Keywords | 南北朝内乱 / 守護 / 在地領主 / 国衙領 / 荘園制 / 室町時代 |
Research Abstract |
本年度の目標は、昨年度に発見した「播磨国国衙目録」を今後の研究に資するよう、その史料的性格を明らかにすることにあった。その成果は以下の通りである。 ・本目録は、付記された給主の名前から、応永4〜6年の状況を示したものと考えられる。さらに、所領没収にともない所領目録が注進されるという慣行を念頭に置けば、本目録は、崇光院-伏見宮家から播磨国国衙領が一旦収公された応永五年に作成された目録の写しであると推測される。 ・当時、伏見宮家は播磨国衙領から、年貢・検注料・臨時課役等の収益を得たが、これらは国衙領奉行を介した守護請によって実現されていた。また、国衙奉行は伏見宮家が国衙領の年貢を原資として振り出す「切符」を、現物化する役目もになっていた。 ・伏見宮家の播磨国衙領支配は、宮家と播磨国守護の間で起こった問題を調整する室町殿によって支えられていた。 ・本目録は、播磨国内の別納の注文であるが、これら別納は国衙領一般と違い守護請ではなく、給主が独自に代官を任用して経営にあたった。 ・それ故、別納は経営の失敗などから給主の手を離れ、伏見宮家の「御恩」としての性格を失うことも起こった。 以上、本目録は当時の国主伏見宮貞成の『看聞日記』とあわせて検討することで、14〜15世紀の西国国衙領の状況を知ることができる、貴重な資料であることが判明した。この成果は、平成17年3月の大阪歴史学会中世史部会で報告したが、来年度中に活字化するように努めたい。 なお、本年度はこれ以外の成果として、14世紀の守護と将軍の関係を整理した論稿、室町期荘園制を一つの論点とした歴史学研究会大会報告の報告批判、の二編を執筆、発表した。
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Research Products
(2 results)