2002 Fiscal Year Annual Research Report
在村国学者・儒学者の阿波古代史研究についての史学史的研究
Project/Area Number |
14510364
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Research Institution | Nara University |
Principal Investigator |
丸山 幸彦 奈良大学, 文学部, 教授 (50035317)
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Keywords | 阿波古代 / 条里制研究 / 名方郡条里 / 多田直清 / 上田寧悳 |
Research Abstract |
本年度は以下の2点を行った。 1 江戸時代から明治の初期にかけて活動していた阿波の在村儒学者・国学者たちの古代・中世地域史にかかわる自筆文献の収集とその解読。松浦長年「松浦長年自筆草稿本」(国会図書館)、同「阿波国板野郡名方郡式社略考」(東北大学図書館)、多田直清「村邑見聞言上記」(東大史料編纂所、京大文学部、徳島県立図書館)、後藤尚豊「阿波国名東郡郷名略考」(無窮会文庫)、上田寧悳「名方郡産土神郷名考」(徴古雑抄)、久富憲明「阿波国風土記」(筑波大学図書館)などについて、その調査および収集を行った。そしてとくに、多田直清・後藤尚豊・上田寧恵の自筆本については、その主要部分の解読作業を行った。 2 吉野川下流域南岸の名分郡域について、この平野地帯に設定されている名方郡条里について、現在の研究状況をふまえながら、その研究史整理を江戸時代にまでさかのぼっておこなった。そして多田直清と上田寧恵という、とくに明治維新期を中心に活動していた2人の地域史研究者の名方郡・麻植郡の郡・郷および郡界に関する所論は、活字化されることもなく、一世紀以上にわたり埋没し忘れ去られていたが、その自筆文献を解読してみることで、それらがきわめて豊かな内容を含んでいるものであることを明らかにした。そして、2人が打ち出している視点をいまの時点であらためて整理しながら生かしていくことで、20世紀後半の歴史・地理研究者たちの吉野川下流域の条里制研究のもっていた欠陥を克服し、研究を新たな次元に導くことができることを明らかにした。なお、この分析の成果は論文として公表した。
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Research Products
(1 results)