2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510376
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Research Institution | Akita National College of Technology |
Principal Investigator |
脇野 博 秋田工業高等専門学校, 人文科学系, 助教授 (80220846)
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Keywords | 幕藩体制社会 / 職能集団 / 身分共同体 / 鋳物師 / 杣 / 木挽 / 技術 |
Research Abstract |
身分制社会である幕藩体制社会において、職能集団である身分共同体で技術がどのようにして行使、習得、改良、保存、伝承されたのかを考察し、身分制という社会的関係のもとでの技術の特質を明らかにするために、林業関係職人と手工業職人を対象として、近世・近代期の資料(文献・史料・図絵)を調査・収集し、目録と資料データベースを作成する作業を行った。この作業を通じて得られた知見は、以下のようである。 明治政府成立にともない、職能集団は幕藩体制下で有していた営業等の独占という特権の否定を通して解体していく。こうした動向のなかで、明治4年、山陰地方の鋳物師は古来からの由緒を根拠にして、特権と職能集団の存続を主張した。このことは、幕藩体制社会を通じて、職人はそれぞれの生業独自の職能に基づく職能集団である身分共同体に属することによって、生業活動が保障されていたことを示している。一方、明治6年、足柄県(現神奈川県)で個人営業している木挽職人は、江戸の杣・木挽職の職能集団が勝手に金銭徴収を強要したりするために営業の妨げになるという理由で、職能集団の廃止を政府に訴え出た。このことから、足柄県の木挽職人のように、すでに技術が職人個人に属する自立した職人が存在していたことを知ることができ、さらに幕藩体制下では職能集団である身分共同体に属していた技術が、近代になると身分共同体の解体によって技術が個人に属するようになるという示唆が得られる。
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