2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510387
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
堤 一昭 大阪外国語大学, 外国語学部, 助教授 (70283835)
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Keywords | 東洋史 / 中国史 / モンゴル史 / 元朝 / モンゴル帝国 / 大元ウルス / 史料学 |
Research Abstract |
本年度の研究の重点は、実績をふまえ、まず大元ウルス(元朝)の高官任命に関する文書形式を通して見える中枢部の人事制度の研究と、また帝室の一分枝たる鎮南王家の江南(南中国)および中国統治体制における地位の研究であった。 前者に関しては、『憲臺通紀』『南臺備要』の調査より判明した高官任命に関する、ユーラシア各地のモンゴル政権に共通する文書形式を「大元ウルス高官任命命令文」と命名し、その命令文が『元典章』においてどのくらい存するかを悉皆調査した。前年度抽出のものも含め、言語・文体・書式・題名等による分類、特徴・性格を分析し、今後の研究の方向性を導き出した。上記の成果を・速報性を考慮して『大阪外国語大学論集』を選択し、その第29号(平成15年9月刊)に「大元ウルス高官任命命令文研究序説」として発表した。さらに、その後の研究成果を加えて平成15年11月15日に大阪国際大学で開催された日本モンゴル学会2003年度秋季大会において、「『元典章』等にのこされたモンゴル高官任命書-モンゴル時代命令文研究の一環として-」と題して発表して、モンゴル学全般さらにはその周辺に位置するチベット学の関係者にも研究成果を伝え得た。 後者に関しては、元時代および明清時代の中国の地方志中に含まれる鎮南王家の王宮(オルド)の実態を伝える記事を抽出した。これと漢文・ペルシア文の年代記史料と比較検討する作業を行った結果、江南統治において当王家が有する地位は、従来の理解とは異なり、きわめて高いことが判明した。この成果の概要口頭報告は、すでに所属の研究会でなされている。年度当初の計画での予想以上に、研究成果のもたらす範囲が大元ウルスに限らず、関連諸政権の王宮(オルド)に関する先行研究をも合わせて調査する必要があることが分かり、別個に新たな研究計画を立て、成果を還元するべきものと判断した。
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Research Products
(1 results)