2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510388
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
菅谷 成子 愛媛大学, 法文学部, 教授 (90202126)
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Keywords | 東南アジア史 / フィリピン史 / マニラ / 華僑・華人 / 植民地 / 東南アジア近世 / スペイン |
Research Abstract |
本年度は、3年計画の最終年度ということで、過去に収集した史料の解読・分析作業を引き続き行った。 なかでも、18世紀末葉のバスコ総督が実施した「ブルボンの改革」の一環をなす、中央集権的な植民地統治政策の下で、中国人移民がマニラの都市住民として植民地社会のなかで、いかに生きていたのか、その生活の具体的な諸相を解明するため、マニラ大司教座古文書翰所蔵の「結婚調査文書」の分析に加えて、フィリピン国立文書館所蔵の「マニラ公正証書原簿」のなかから中国人や中国系メスティーソの関わった「公正証書遺言」を抽出し、その内容の分析を行った。それにより、この当時の中国人は、スペインの統治政策によって、カトリシズムを受容し、現地女性と婚姻して家族を形成し、マニラに生活の基盤を築いていたが、このことは必ずしも中国的価値観からの離脱や故郷との断絶を意味しなかったことが明らかになった。また、これに関連して、中国人と結婚した中国系メスティーソ女性が、これら中国人の現地化を促進する一方、マニラの中国人移民杜会の維持にも重要な役割を果たしていたことが示唆された。これらの研究成果の一部を、2004年6月、オランダのライデン大学で開催された「第7回国際フィリピン研究国際学会(7yh ICOPHIL)」において"Becomin Spanish Subjects : Chinese Society in the Spanish Philippines, 1750-1820"として報告した。また、さらに、スペイン植民地政府が18世紀中葉になって、なぜ中国人移民にカトリック信仰を要求するようになったかの分析を加えて、「18世紀末葉のスペイン領マニラ-『マニラ公正証書原簿』から見た植民地祉会における中国人-」(『愛媛大学法文学論集人文学科編』第18号、2005年2月)として発表した。
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