2004 Fiscal Year Annual Research Report
祠廟の記録を主史料とした唐中期〜南宋期の王朝権力と地域社会の連関構造に関する研究
Project/Area Number |
14510392
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
須江 隆 日本大学, 生物資源科学部, 助教授 (90297797)
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Keywords | 宋代中国 / 王朝権力 / 地域社会 / 祠廟 / 地方志 / 在地エリート / 社会構造 / 徽宗時代 |
Research Abstract |
研究代表者須江は、本研究の体系化にあたって不足していた、北宋末期以降の宋王朝による地方統治と地域社会の成熟度との連関性、南宋期の在地知識人社会の実態と王朝権力との関係について、石刻史料に加え、総志・地方志の史料論的分析を行い考察した。その成果は、国内では、「地方の時代-地域社会への視点-」「祠廟の記録に見える近世中国の「鎮」社会-南宋期の南潯鎮の事例を中心に-」「北宋末期以降のある地方志の出版」として、論文等のかたちで公にした。同時に海外でも、平成16年8月中にモスクワで開催された「第37回国際アジア・北アフリカ研究会議」において、"Order in Zhen Society : Temples and Local Elite"と題して公表した。以下は上記成果の概要である。1.北宋末期の徽宗時代は、地方の実態を把握しようとする試みが積極的になされ、地方に重点がシフトする社会変質の転換点となっていた。この時期の総志編纂事業により、地方の多様な情報整理が頻りに行われ、地方での方志編纂の切掛けを作った。総志編纂事業と並行し、祠廟統制システムが整備され、その徹底を通して民間の人々の心性をも支配しようとした。2.在地知識人社会の成熟を背景とした官僚による当該社会への視点の傾倒が、総志・方志編纂出版事業の活性化を結果した。3,南宋期に形成された鎮社会のリーダーは、祠廟など地元建造物への介入・財源面での貢献、人民教化により、リーダーたる資格が住民により付与された。彼らが維持に貢献した祠廟では、地域独自の伝承に基づく神々の言説が形成され、その信仰が鎮社会の人々の文化的・精神的統一原理となっていた。宋王朝は、かかる成熟した鎮社会を統制せざるを得なくなり、祠廟で祀られる神々を通じて人々の心性をも支配しようとした。鎮社会のリーダーたちは、宋王朝の現実的政策選択を歓迎し、鎮社会の新秩序形成のために、神々の表象を体制教学に沿うように改変乃至は作為していった。
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Research Products
(4 results)