2003 Fiscal Year Annual Research Report
ブラジルにおける「公定多文化主義」と歴史意識の変容
Project/Area Number |
14510401
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
鈴木 茂 東京外国語大学, 外国語学部, 教授 (10162950)
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Keywords | ブラジル / 多文化主義 / アファーマティブアクション / 人種主義 / エスニシティ / 公共性 / 社会運動 / 労働者党 |
Research Abstract |
本年度は、3年計画の中間の年度として、昨年度に引き続いて本課題の全体的な構図の把握に努めるとともに、2003年1月に発足した労働者党(PT)ルーラ政権の人種問題に関する取り組みについて、8月から9月にかけての約1ヶ月間、ブラジル各地で調査した。今回は、昨年も訪問したリオデジャネイロ、ブラジリア、サンパウロに加え、北東部の主要都市で人口の約8割をアフリカ系人が占めるサルヴァドールを加えた4都市において、主に「定員割当(クオータ)制」をはじめとする連邦大学、州立大学へのアフリカ系学生の進学を積極的に進めるアファーマティブアクションについて、当事者からの聞き取りと資料収集を行なった。また、ブラジリアでは、昨年来調査している法務省人権局,文化省パルマーレス文化財団,教育省「大学における多様性プログラム」の他に、ルーラ政権によって創設された連邦政府の新しい機関、「人種平等促進特別庁(SEPIR)」を訪れ、聞き取りと資料収集を行なった。 リオデジャネイロとサンパウロではまた、人種問題に関連するさまざまな市民団体を訪れ、活動の理念と実態を調査した。リオデジャネイロでは、1940年代後半から黒人運動に携わり、1980年代から1990年代にかけて連邦下院議院、上院議員として活躍したアブディアス・ヂナシメント氏にインタビューを行ない、その様子をビデオに収録した。また、今年度は、社会運動や黒人女性の視点から見たブラジルの多文化主義の現状についての調査にも力点を置いた。そのため、リオデジャネイロ州の機関である「女性の権利審議会」、サンパウロ州サントスに拠点を置いて全国規模の雑誌『エパレイ!』を発行しているNGO「女性の家」を訪れて、聞き取りと資料収集し、討論会へ参加した。 本研究に関連して、2本の論説のほか、2003年6月7日に開かれた第24回日本ラテンアメリカ学会(神奈川大学)の全体シンポジウムにおいて、「ブラジルの多文化主義と歴史意識」(スペイン語)を報告した。
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