2004 Fiscal Year Annual Research Report
中世盛期の聖域と地域社会-11、12世紀の修道院をめぐる寄進と紛争-
Project/Area Number |
14510420
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
杉崎 泰一郎 中央大学, 文学部, 教授 (60235877)
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Keywords | 西洋中世史 / クリュニー修道院 / ブルゴーニュ / 聖域 / 墓地 |
Research Abstract |
クリュニー修道院がブルゴーニュ地域社会と改革を推進する教皇に対して、実際に行使した社会的な影響力を調査するため、聖域としての機能に着目して研究を進めた。具体的には、研究が遅れている修道法規の分析をはじめ、修道院所領が聖域として特権化し、祈祷と引き換えに有力諸侯からの寄進を受け、グレゴリウス改革と関連を持った11世紀の修道院典礼と外部社会の参加について考察した。10世紀の末から11世紀の末までに、クリュニー修道院では『古慣習律』『道の書』『ウルリヒの慣習律』『ベルナールの慣習律』『ユーグの会則』などの規定書が次々と定められた。そこにはクリュニー修道院の生活が細かく記されていて、王侯の受入れ規定や儀式の次第、墓地の様子や埋葬慣習、所領内の住民に対する施しやミサなどの宗教行為など、いままで曖昧であった修道院外部の有力者とのかかわりについて知る手がかりを得た。これらの慣習律は研究が著しく遅れているため史料の刊行も不十分で、『ベルナルドゥス慣習律』の18世紀の刊本は日本で手に入らないこともあり、夏にドイツのミュンスター大学初期中世研究所に滞在し、これを複写するとともに、この史料を使用する際の問題点などについて情報を得た。同研究所ではクリュニー関係史料のデータベース化を進めており、これを利用して必要なデータを集中的に集めた。またパリにクリュニー研究の中心的研究者であるイオニャ・プラ氏(CNRS)を訪ね、墓地に関わる研究の現状と今後の進め方について情報を得た。これらのことをもとにして、論文「修道法規から見る11世紀クリュニー修道院」を『ノートルダム女子大学キリスト教文化研究所年報』に掲載した。
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Research Products
(2 results)