2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510454
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
上野 和昭 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10168643)
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Keywords | 日本語アクセント史 / 平曲古譜本 / 平家正節 / 平曲譜 / 名乗のアクセント / 特殊低起式表記 / 近世京都アクセント / 方言アクセント |
Research Abstract |
1、平曲古譜本の譜記と近世京都アクセントとの関係について、筑波大学本・也有本・正節本・平語小曲・正節本、また波多野流譜本(京大本)の譜記は、相互の対応が著しく、概略近世京都アクセントを反映するものと見なして誤らない。 2、江戸前田流の吟譜系譜本の場合も、とくに筑波大学本・也有本の譜記との対応が顕著である。これに対して江戸前田流譜本とされる所謂「豊川本」(演博本)の譜記はこれにやや劣り、金田一春彦蔵『平家書』の譜記はアクセントとの対応が認められない箇所も少なくない。 3、平曲の旋律と譜記との関係について、ある特定の旋律が譜記に反映した筑波大学本の《上中上中》のごとき連続譜は、也有本では《×中上中》《上上上中》などの抑揚の少ない譜記と対応するが、吟譜系譜本では筑波大学本との対応が著しく、一部は『秦音曲鈔』とも類似するところがある。 4、近世京都アクセントの音調に反して低起性旋律が譜記に反映した、いわゆる「特殊低起式表記」の類型は譜本間に傾向の違いをみせがちで、諸流派の影響関係を推定することも可能であると考えられる。 5、『平家正節』所載の名乗のアクセントについては、過去の京都アクセントにおける変化を多数型への類推と型の統合という観点から説明できる。 6、ただし、現代における名乗アクセント(H0型とH1型)のうちのH1型は『平家正節』の譜記から知られる近世京都のそれとは異質なもので、前者は現代の基本型の一つであるのに対して、後者は古い時代のLLHL型などからの変化形である。 7、『平家正節』の譜記にみえる「特殊低起式表記」は、(a)5-2類型《××上上コ×》、(b)6-4類型《××××上コ×》、(c)4-2類型《××上コ×》、(d)その他、のような類型に大別できる。
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Research Products
(2 results)