2002 Fiscal Year Annual Research Report
泉鏡花文学の成立基盤としての近世文学、特に草双紙についての研究
Project/Area Number |
14510461
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須田 千里 京都大学, 総合人間学部, 助教授 (60216471)
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Keywords | 泉鏡花 / 近世文学 / 草双紙 |
Research Abstract |
今年度は、本研究達成の基礎的作業として、「泉鏡花蔵書目録」(昭和51年3月岩波書店刊第二版『鏡花全集』月報29所収)に記された草双紙のうち、現在確認可能なものの複写を中心としたが、その一部については具体的な影響関係の調査も行った。 国文学研究資料館蔵マイクロフィルム・国会図書館・東京都立中央図書館蔵本(加賀文庫・東京文庫)などから複写した文献の一斑を示せば、「七不思議葛飾物語」初〜十編、「金毘羅船利生纜」初編、「霜夜鐘十字辻筮」四〜五編、「新局九尾伝」初〜十四編、「鼠祠通夜物語」二・三・五〜八編、「稗史水滸伝」初・三〜六編、「童謡妙々車」初・十四・十七・二十編、「足利絹手染紫」十九〜二十編、「花曇朧夜草紙」四〜六編、「稚源氏東初旅」初〜五編、「関太郎鈴鹿故事」初〜五編などである。その他、活字本で「新編金瓶梅」・「殺生石後日怪談」「稗史水滸伝」なども複写した。これで、京都大学蔵本を合わせて全体のおよそ七〜八割は確認できたことになる。別に、明治初期の草双紙も関連文献として購入した。残りの文献は明治の活字本の所在や、雑誌・新聞などに翻刻されたかどうかの確認も含めて、国会図書館や日本近代文学館などで調査したが、中には複写費用の関係で今年度は見送ったものもあり、次年度以降逐次入手する予定である。 今年度影響関係が新たに判明したのは、「稗史水滸伝」とその後編「国字水滸伝」の、泉鏡花『風流線』正続との関わりである。特に、『続風流線』単行本(明治三八年)口絵(鰭崎英朋画)が、「国字水滸伝」十三編のそれに酷似することを発見した。従来、本作は「水滸伝」との関連で論じられてきたが、特にその中で、大衆的な翻案である草双紙の強い影響下に成ったことが判明したのである。
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