2002 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代から現代までの子どもの読み物における英勇譚の系譜と作品分析と価値観の研究
Project/Area Number |
14510475
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Research Institution | Baika Women's University |
Principal Investigator |
加藤 康子 梅花女子大学, 文学部・児童文学科, 助教授 (60299005)
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Keywords | 上方絵本 / 幕末・明治の豆本 / 草双紙 / 幕末・明治の絵双六 / 英雄譚 / 武者物 / 歴史物語 / 子ども絵本 |
Research Abstract |
江戸時代から現代までの子どもの読み物における英雄譚の系譜の内、平成14年度には主に下記の研究を行った。それぞれの項目の成果をあわせて記す。 1.上方絵本、特に武者物あるいは歴史物語の調査 大阪府立中之島図書館、関西大学附属図書館中村文庫、香川大学附属図書館神原文庫、国立国会図書館、肥田晧三氏の所蔵本などを許可を得て閲覧し、書誌や内容を調査した。許可を得たものは複写をした。作品分析中であるが、これまでのところ上方絵本では武者尽くし、歴史物語などが目立ち、近代以降はあまり伝承されなくなった人物が含まれていること、よく知られている人物でも近代以降はあまり伝えられなかった逸話が含まれていることなどの傾向が見られた。また、江戸出版の武者物と比較すると上方独自の人物が見られたり、物語性がより多く見られたりする違いが推測された。 2.豆本、特に武者物の調査と作品分析 これまで調査していた作品の中から武者物の作品分析を続けている。これまでのところ豆本では武者尽くし、一代記などが多く、江戸中期の赤本以来の草双紙の系譜にあって、特に同時代の合巻の影響を受けている傾向が見られる。したがって合巻同様演劇との関連も多い。その一方で一代記でありながら武者尽くしや子ども遊び尽くしの絵本の様に仕立てられた作品も見られ、豆本という限られた枚数の場合には、その体裁から内容が変容していく傾向も推測された。 3.絵双六、おもちゃ絵、特に武者物と関連のある作品の調査 これまで調査していた作品の中から武者物の作品分析を続けている。これまでのところ読み物と密接な関係があることが推測された。 以上3点の研究項目の成果から、引き続き上方絵本、豆本、絵双六・おもちゃ絵の調査・分析を続けながら、軍記物語や草双紙、演劇との比較、特定人物に関する各ジャンルの比較、近現代の作品との比較などを今後の課題として考えている。
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[Publications] 加藤 康子: "江戸時代の大衆印刷文化に見られる昔話-絵双六・おもちゃ絵などの一枚摺りの場合-"昔話-研究と資料-. 30. 75-95 (2002)
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[Publications] 加藤 康子: "幕末・明治の豆本"梅花児童文学. 10. 1-16 (2002)
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[Publications] 加藤 康子: "日本児童文学前史における豆本"梅花女子大学文学部紀要. 36. 1-20 (2002)
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[Publications] 加藤 康子: "豆本『絵本豊臣一代記』について"叢 草双紙の翻刻と研究. 24. 302-324 (2003)
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[Publications] 加藤康子, 黒石陽子, 丹和浩, 有働裕, 高橋則子 他: "赤本・黒本・青本解題集稿(四) 加藤担当:千本左衛門・山の神由来"叢 草双紙の翻刻と研究. 24. 338-339,345-346 (2003)
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[Publications] 加藤康子, 松村倫子 (共著): "幕末・明治の絵双六"株式会社国書刊行会. 349 (2002)