2004 Fiscal Year Annual Research Report
江戸期における詩経解釈学史の基礎的研究-詩経関係書目及び解題作成と解釈学史の考察
Project/Area Number |
14510485
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
江口 尚純 静岡大学, 教育学部, 教授 (80252154)
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Keywords | 詩経 / 日本漢学 / 儒教 / 古注 / 新注 / 四書五経 / 江戸儒学 |
Research Abstract |
本研究は、日本詩経解釈学史の基礎的な調査として、中国における古注新注をふまえた総合的な詩経研究が展開されたと思われる江戸時代に注目し、まず邦人による詩経関係の著述を総合的に整理分類した「江戸期における詩経関係書目」を作成し、その詩経研究のありようを鳥瞰する。さらに同時に中国での詩経関係文献の日本における翻刻の調査を併せ行い、「江戸期における詩経関係和刻本目録」を作成することを主な目的に推進した。本年度はその最終年度として、昨年度までに作成した暫定目録をもとに、整理と分類、複写した文献の分析などを行い、両目録の現時点における完成版を作成した。これで江戸期における詩経研究の基礎的なデータベースは完成し、江戸期の詩経解釈学史構築の基礎データは揃った。また目録作成中に重要と思われる文献を抽出しながら本研究の次に実施する本格的各論研究のベースとした。このうち、本年度は主として増島蘭園『詩序質朱』と斎藤芝山『復古毛詩序録』について研究した。『詩序質朱』は新注派に属する増島蘭園の著作であるが、詩序に対する蘭園の態度は朱子のように過激ではなく、詩本文と詩序を一篇一篇吟味して採否を決するという態度で書かれており、当時の朱子学を奉ずる学者の一典型を示していることを明らかにした。斎藤芝山は古注派に属する学者であるが、『復古毛詩序録』では毛伝などの古注系の注釈を妄信しているのではなく、詩序を堅持しようとする立場であって、これは明学、ことに〓敬の影響が色濃く見られることを指摘し、新注の勢力が大きくなる学的風潮の中で「復古毛詩」の表題をもってした芝山の意図を究明した。また本年度は台湾で開催された日本漢学国際学術研討会に招聘され、今回作成した目録の成果と大田錦城の詩経学について報告した。今回作成したデータベースは近い将来ホームページなどでの公開を予定している。
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Research Products
(2 results)