2002 Fiscal Year Annual Research Report
アジア系アメリカ文化・文学とアメリカ多文化主義の双方向的影響関係に関する研究
Project/Area Number |
14510520
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山本 秀行 神戸大学, 文学部, 助教授 (90230581)
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Keywords | アジア系アメリカ文学 / アジア系アメリカ人運動 / アメリカ多文化主義 / Frank Chin |
Research Abstract |
本年度においては、70年代後半のアジア系アメリカ文化・文学の成立期におけるアメリカ人の政治的・社会的意識を研究し、アジア系アメリカ文化・文学とアメリカ人の政治的・社会的意識の関係を究明することに取り組んだ。当時のアメリカ政治・社会思想史的研究をふまえた上で、アジア系アメリカ文化・文学をフランク・チン(Frank Chin)を中心とするアジア系作家の政治的・社会的意識を文学・演劇テクストを通して究明した。また、アジア系アメリカ文化・文学の成立過程、および当時のアジア系アメリカ人の政治的・社会的意識を解明するための必要文献については、所属大学図書館を通じて国内で入手可能な資料を収集した。国内で入手不可能の文献については、アジア系アメリカ文化・文学関係に関して世界で最も充実した蔵書を誇るUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)図書館に出張し資料収集した。同時に、UCLAアジア系アメリカ研究センターに足を運び、本研究についてUCLAの教授陣をはじめ、そこにアメリカ各地はもちろん世界中から集まって研究しているアジア系アメリカ学者と意見交換した。特に、同センター長であるドン・T・ナカニシ(Don T. Nakanishi)教授との聴き取り調査により、70年代に米国西海岸の大学で始まったアジア系アメリカ人の権利拡大運動、いわゆるアジア系アメリカ人運動の実状、アジア系アメリカ同センターの成立にいたるまでの経緯、ナカニシ教授がキャンパス内でのアジア系アメリカ人学生・教職員の支援を受け訴訟により教授職(tenure)を勝ち取るまでの戦いについての体験談など貴重な情報を得た。こうした数多くの資料・情報を収集し、それを精繊に分析し研究することにより、来年度以降の研究の土台を築いたという点で、本年度の研究は非常に有意義なものであった。
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