2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510545
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
笠原 順路 明星大学, 人文学部, 教授 (00194712)
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Keywords | Physico-theology / natural philosophy / English poetry / topographical poetry / lyric / Lord Byron / The Siege of Corinth |
Research Abstract |
昨年度は『地誌から叙情へ』を刊行したのに引き続き、本年度は、その改訂をおこなった。具体的にはページ割は変えずに誤記の訂正をほどこした。 かつて申請者はバイロンにおける廃墟の取り扱いを論じたときに、バイロンにおける地誌的要素について触れたことがある。本年度は、このテーマの延長として、バイロン『コリントの包囲』に注をつけ、翻訳をした。この作品は、コリントという実在の地名と、そこに繰り広げられた歴史上の実話をもとにしつつ、そこに、虚構として恋物語をかぶせたもので、実話の上に虚構をのせるその方法は、上記の地誌から叙情へというテーマと軌を一にすることは論をまたないが、本研究のテーマである自然神学詩の変貌を見るうえで大変参考になった。 以下、簡潔に梗概を示す。ヴェネチア支配下のコリントに対し、オスマントルコ軍が攻撃をしかける場面から始まる。ここまでは史実である。その後につづくAlpとFrancescaの恋が虚構である。そのトルコ軍の先鋒を務めるのが、背教者Alp。彼は嘗て、とある乙女を恋するも、その父親の反対で結ばれず、以後、祖国と十字を棄て、新月旗を掲げて復讐を挑まんと、今コリント包囲の陣頭に立っている。そして、奇しくも嘗てのAlpの恋人Francescaの父Minottiがコリント市総督兼防衛軍大将として、攻め来るオスマン軍を迎え撃とうとしている。攻撃を明日に控えた満月の夜、Alpは一人、海辺の陣営を出て、過去のこと、現在のことどもに思いを馳せる。浜は、風もなく静か。Alpは、野犬が戦死者の残骸を食い荒らしている様、禿鷹が軍馬の死骸を啄ばんでいる様などを見ながら、廃墟となった神殿に来る。その列柱の基石に腰をおろしているところへFrancescaの亡霊が登場し、Alpに改悛をせまる。 なお、本研究は、何れ出版予定のバイロン作・笠原順路訳『バイロン詩集』(岩波文庫)に採録予定である。
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Research Products
(1 results)