2002 Fiscal Year Annual Research Report
トマス・グレイと18世紀の古詩復活-ウェールズの古詩収集に対する関心と貢献
Project/Area Number |
14510552
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
片山 麻美子 大阪経済大学, 人間科学部, 教授 (50183778)
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Keywords | トマス・グレイ / 18世紀古詩収集 / ウェールズ / ジェイムズ・マクファーソン / トマス・パーシー / 18世紀イギリス史 / エヴァン・エヴァンス / ケルト文化 |
Research Abstract |
本年度は春に日本ジョンソン協会年次大会シンポジウム「視覚芸術・視覚文化とイギリス18世紀」において、「詩と絵画における競合、あるいは協力関係・・・トムソンとグレイを中心に」と題し講師をつとめた。当時のut picture poesisの詩と絵画の密接な創作関係はグレイの詩作に大きな影響を与えており、「詩仙」における古代詩人の造形にも深い関わりをもつ。また『地誌から抒情へ』と題する共同出版で、グレイの「挽歌」における自然描写と抒情性との観点から作品を論じた一章を担当執筆したが、年内発行の予定である。 9月には英国でのチャタトン学会に出席した。主催者のN.Groomはパーシーの研究で知られ、古詩研究を牽引する立場にある。グレイ以降のチャタトンや古詩収集家について発表を聞き、直接研究者と交流できて有用であった。 学会の後、ウェールズに赴き国立大学カーディフ校のE.W.James教授、またアベルスティス国立研究所のP.Lord教授に面会し、研究の助言を得るとともに、資料収集の手引きを指導していただいた。特にIolo Morganwgの研究者であるM.Constantine教授からは、エヴァンスやマクファーソンの影響などウェールズでの古詩復活運動に関して重要な助言を得ることができた。これらは昨年出席したRomantic Wales学会で知己を得た研究者による厚意で実現し、古詩研究が現在のウェールズの文化復興の一端を担っていることを実感した。出張の最後は大英図書館で文献調査を行った。グレイは18世紀のケルト文化の知識と、13世紀エドワード一世のウェールズ侵攻の史実を組み合わせて「詩仙」を創作したが、現在この作品における古代詩人を考察した英文論考を執筆している。 英国への出張は研究遂行上大変有意義であり、補助金支給に感謝している。なお海外での調査のため老朽化したノート・パソコンの買い替えを行った。
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