2003 Fiscal Year Annual Research Report
トマス・グレイと18世紀の古詩復活--ウェールズの古詩収集に対する関心と貢献
Project/Area Number |
14510552
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
片山 麻美子 大阪経済大学, 人間科学部, 教授 (50183778)
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Keywords | トマス・グレイ / 18世紀古詩収集 / 18世紀イギリス史 / エヴァン・エヴァンス / ケルト文化 / ウェールズ / トマス・パーシー / ジェイムス・マクファーソン |
Research Abstract |
本年度はグレイがウェールズの古詩復活に多大な影響を与えた「詩仙」について文献調査を行い、考察を加えた。まず、夏にイギリスで開催されたWordsworth Summer Conferenceにおいて"Thomas Gray and the Making of the Ancient British Bard"と題する研究発表をおこなった。エドワード1世によるウェールズの詩人虐殺という歴史上の伝説に焦点をあて、グレイが「詩仙」で勇猛な古代精神を具現した詩人像を創造した過程を論じた。学会ではロマン派研究者による講演・セミナーへ参加し、UCLA大学のFred Burwick教授から発表論文について助言を得た。(本務校による旅費支給) また冬には補助金を活用して、再度、大英図書館でイギリス史の文献調査を行い、その後ウェールズのLord, Constantine, James各教授を訪れ懇談した。特に近年問題となっているケルト概念の捉え方とウェールズの歴史について最近の研究動向を踏まえた議論を伺い、エヴァンスに関しても有意義な助言を得た。これらの新しい知見を加え、夏の学会発表をもとに英語論文を作成中である。 ウェールズの古詩復活については、単に文学運動としての側面だけでなく18世紀のイングランドの国家意識の高まりとウェールズの文化の見直しによる過去の再発見、歴史の再構築という視点が必要であると認識している。従って、グレイの作品研究だけでなく日本ケルト学者会議に参加するなど、最近のケルト研究の議論を踏まえたウェールズの基礎理解に努めた。カート、ローランズなどの歴史家、好古家などの資料によって古詩収集の背景を考察することは、グレイの役割と当時のイギリスの文化・歴史観を解明する上で重要と考える。 最後に2004年3月に「挽歌」における風景描写と自我意識を論じた『地誌から叙情へ』を出版した。また研究室据え置きのコンピューターが老朽化したため、机上用一台を買い換えた。
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