2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510569
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東郷 雄二 京都大学, 総合人間学部, 教授 (10135486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 充 京都大学, 総合人間学部, 教授 (60129947)
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Keywords | 指示 / 照応 / 不定名詞句 |
Research Abstract |
本研究は自然言語における指示と照応現象を語用論的観点から解明しようとするものである。本年度はすでに構築した会話フランス語資料をもとにして、主として不定名詞句の総称解釈について考察を行なった。不定名詞句(例えばun chien)は、伝統的には存在量化表現∃x chien(x)と見なされてきたが、Heimのfile change semanticsやKampの談話表示理論では、不定名詞句は自由変数を談話に導入するだけだとされている。この見方に立つと存在量化の力は不定名詞句そのものに内在するのではなく、別の所に由来することになる。 われわれはHeim/Kapmの見方に立ち、今年度の研究では、以下のことを明らかにした。 1)不定名詞句の存在量化力は、不定名詞句に内在するのではなく、それが含まれたイベントを表す時空変数の量化により間接的にもたらされるものである 2)このとき不定名詞句の指示対象の存在前提は、量化されたイベントに従属する。言い換えると、不定名詞句の指示対象は、イベントを離れては保証されない。 3)名詞述語は個体レベル述語の典型であるが、名詞にも時空変数を認めるべきである。これは不定名詞句の総称解釈を正しく導くために必要である。 4)不定名詞句は∃s∃x(N(x,s)∧P(...x...s))のとき談話に適切に定位される。ただし、sは時空変数、Nは名詞述語、Pは局面レベル述語である。 5)不定名詞句の総称解釈は、不定名詞句の存在量化解釈ができないとき、すなわち極小の存在領域に定位することができないときに、次の原則により得られる。「不定名詞句の存在量化解釈ができないときは、存在量化子を全称量化子に書き換えよ。」すなわち、不定名詞句の指示対象の存在領域を、最大解釈せよという操作である。これにより、A beaver builds dams.の意味は「すべてのビーバーはすべての場所においてダムを作る」という総称の意味が得られる。
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Research Products
(1 results)