2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14510598
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
神尾 達之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60152849)
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Keywords | 文化学 / ドイツ文学 |
Research Abstract |
「CSをドイツ文学研究再活性化のための方法として位置づける際に、メディア論を両者を結ぶ媒介項とすることができるか?」という問いに答えることを主眼におきつつ、過去3年間の研究成果をまとめる準備を行った。「<産業>の付かない<文化>としてのコミック?」では、日本ではサブカルチャーの中心的な位置をしめるマンガが、ドイツではどのように位置づけられているのかを考察した。文化概念の本質的な相違が浮き彫りになった。『初期オペラの研究』では、ゲーテ『魔笛第二部』断片をメディア論的な観点から分析し、伝統的なドイツ文学研究からは照射されない時代的な連関のなかにこのテクストを位置づけた。日本独文学会2005年度春季研究発表会では、『纏う、あるいは<本質>から遠く離れて』というシンポジウムを企画し、ドイツ文学研究にとってのKulturwissenschaftの有効性を、表層-深層のトポスを問題化することで確認してみた。神尾は、「顔を纏う」というテーマのもと、ラーヴァーター以降の観相学のテクノロジー化・デスマスク・美容整形の連関を考察した。『ヴェール/ファロス 真理への欲望をめぐる物語』では、真理をはじめとする絶対的なもの・それを認識しようとする主体・そして両者を隔てる障害物から成る構図の上で展開される真理への欲望を、単なる文献学の枠組みをこえて、Kulturwissenschaft的な視点から分析した。国際シンポジウム『スイスコミックと日本のマンガ』では、「終焉の記号・記号の終焉」というテーマで、手塚治虫の最初期のマンガが内包していた矛盾が、20世紀末以降のマンガにおいては戦略として採用されていることを指摘した。ドイツ語圏の研究者との議論を通じて、日本のサブカルチャーを分析する際にKulturwissenschaftの方法が有効であることを確認することができた。
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Research Products
(5 results)