2004 Fiscal Year Annual Research Report
古代ロシア文語萌芽期の第二段階におけるハイブリッド性の多様さと重層性について
Project/Area Number |
14510607
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
岩井 憲幸 明治大学, 文学部, 教授 (60193710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
服部 文昭 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (80228494)
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Keywords | ムスチススフ福音書 / アルハンゲリスク福音書 / 古代教会スラブ語 / 古代ロシア語 / 東スラブ語 / ロシア語史 / ルシズム / スラブ文献学 |
Research Abstract |
本年度は第1に『アルハンゲリスク福音書』の索引の改良をひき続き行なった。特に接続詞のи と3人称代名詞жиの対格・単数иとの弁別作業を全面的に行なった。その結果30ほどの問題箇所が浮かび上ったが,『マリア写本』を第1の基準として判定していった。その際明らかになったのは,1)やはり形容詞・分詞において長語尾形を好むこと,2)テキストの提示において粗雑さが見られ,従ってカノンからの逸脱や付加が存在すること,である。第2に『ムスチスラフ福音書』本文を1983年刊行本のテキストに従い,全体の78%ほどを電子化した。次年度も継続する予定である。第3に『アルハンゲリスク福音書』における人称代名詞・2人称単数および再帰代名詞におけるрусизмの問題を研究した。与格・所格(D-L)に注目すると,OCS形ТЕБЪ,СЕБЪの他にрусизм形ТОБЪ,ТЕБЕ;СОБЪ,СЕБЕ,СОБЕが出現することが観察できる。これらの形態の内,第2のрусизм形ともいうべきТЕБЕ;СЕБЕ,СОБЕに注意すべきである。さらに次の知見を得た。1)Arch^1はТЕБЪ,СЕБЪの両語でOCS形とрусизм形が併存する。第2のрусизм形ТЕБЕ,СЕБЕの侵蝕が進行している。2)Arch^2はArch^1とは逆で,русизм形が圧倒的。第2のрусизм形ТЕБЕ,СЕБЕの侵蝕は進んでいるが,むしろこれをとび越えてТОБЪ,СОБЪに向かう傾向がある。3)第1音節の母音をЕからОに変ずる現象は,前置詞との結合時に生じやすい。4)同様のОの母音を有する格形が古く『スヴャトスラフ文集』1073年の155vに<ТОБЪ,ДБЛБ>と出現する。
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